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2.昼飯仲間たちと俺
俺は購買を出て、教室の自分の席に戻った。
「彦根くん、おかえり。今日は勝てた?」
いつも一緒に昼飯を食べている白鳥が、弁当箱を取り出しながらそう聞いてきた。
「負けた」
俺はポテトサラダパンが入った袋を見せた。焼きそばパンの代わりに買ったものだ。
「じゃんけん弱いよなあ、お前」
もう一人の昼飯仲間である天野が、コンビニのおにぎりを開けながらそう言って笑う。
「そんなことないし。あいつがじゃんけん強すぎなんだろ」
ちなみに俺は、織部とのじゃんけんに十五回中十回負けている。なんでだ。
織部が転校してきたのは三ヶ月前。高校二年生になった四月のことだった。
先生に紹介され、黒板の前に立ったのは色が白くてまつ毛が長く、少し伏し目がちな男だった。俺が毎週日曜に観ているヒーロー番組シリーズの、ライバルキャラとしてよく出てきそうな奴だと思った。
彼は織部光です、と一言だけ言うと先生から指定された席に座った。
転校してきてすぐの頃こそ、クラスの奴らが声をかけていたが、織部の対応はあまりにもそっけなかった。
「好きなテレビとかある?」
「観ないから」
「じゃあさ、好きな音楽は?」
「聴かない」
こんな調子なのだ。一体、普段何をしているのかわかりやしない。今では誰も話しかけていない。
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