2.昼飯仲間たちと俺

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 多分あいつと、今一番交流があるのは俺だ。 「いつも食べたいものが被るなんて、すごいよねえ」  白鳥が弁当の卵焼きを箸で持ち上げながら、のんびりと言った。 「食べたいものが被るだけじゃないぞ。最後の一個、ってところで取り合いになるんだ」  最初に取り合いになったのは、今日と同じ焼きそばパン。あのときはあいつが転校してきてすぐだったから、引越祝いだと思って、俺が譲ってやったのだ。  だがその後も、毎日とはいかなくても週に二、三度、俺と織部は購買で最後の一個を争っていた。二回目は唐揚げ弁当、三回目は期間限定のいちごヨーグルト、四回目はデザートに食べようとしたシュークリーム……。後は忘れた。 「彦根が買おうとしてるものを見て、わざと狙ってるってことねえか?」  天野がおにぎりを飲み込んでから言う。 「なんのためにだよ」 「話し相手が欲しくて、とかさ」 「じゃあ普通に話しかけてこいよ、って話だろ」  俺は購買での織部の様子を思い描いて、さらに続けた。 「それにあれは俺の行動を見てから動いてるんじゃないと思う。俺とまったく同じ瞬間に食べたいものを決めて、手を出してるとしか思えないくらいぴったりのタイミングなんだよ」 「まるで双子みたいだね」 「赤の他人だぞ。兄弟や親戚ですらない」 「生き別れの双子とかだったりしねえか」 「それか、前世で双子とか。実は元は一人の人間として生まれるはずだったんだけど、神様の手違いで二人に分かれちゃった、とか」  白鳥と天野は完全に、漫画のネタを考えるノリになってしまった。  そんな二人に適当に突っ込みを入れながら、俺は昼飯を食べ終えた。うん、ポテトサラダパンもまあまあだったな。
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