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3.最後の一個のフィギュア
授業が終わると、俺は超特急で鞄に荷物をまとめて学校を出た。早足で歩き、学校から駅までの道にあるスーパーの自動ドアをくぐる。スーパーの冷気と蛍光灯の明るさが俺を迎えてくれた。
俺が放課後に、急いでここにやってきたのはある重大なミッションのためだ。
……などと格好つけてみたが、他人から見れば大したことはない。食玩を買うだけのことだ。
俺が買おうとしているのは「アステリズム フィギュアコレクション vol.3」。今放送中のヒーロー番組、星戦士アステリズムの小さいフィギュアが、ランダムで一つ入っている、今日から発売の食玩だ。
俺のアステリズムでの推しは、ライバル怪人エレテス。こいつは宇宙を征服しようとするラスボスに仕える幹部なのだが、本人は権力より強さを求めていて、主人公たちにも正々堂々と勝負を仕掛けてくる。そこが俺は非常に好きなのだ。
そしてここからが重要なのだが……ヒーローのフィギュアは商品化されやすくても、怪人のフィギュアというものはなかなか出ない。ストーリー上、重要な役割を果たしている怪人であってもだ。
だがこの食玩のラインナップには、奇跡的にエレテスがいる。この食玩が売り出されている間に手に入れられなければ、一生エレテスのフィギュアには巡り会えないかもしれない。
こういうとき大人であれば、「大人買い」というやつで目当てのものを引けるのかもしれない。しかし高校生には、そんなことできない。
というわけで今日の俺のミッションは、アステリズムのフィギュアが売り切れないうちにスーパーに寄って、運を天に任せて買うことなのである。
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