5.あいつとの和解

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 俺たちは公園のベンチに座って、フィギュアコレクションの箱を開けた。  俺の箱から出てきたのは主人公であるレッドコメットの次に変身するヒーロー、ブルーノヴァ。  織部の箱から出てきたのはレッドコメットの先輩にあたるブラックミーティアだ。 「お目当ては出たか?」 「ううん。ブラックミーティアも好きだからいいけど」  俺が引いたブルーノヴァかどうかも聞いてみたが、違うらしい。 「誰が欲しいんだ?」 「……レッドコメット」  織部の口から出てきたのは作品の主人公である熱血なヒーローの名前だった。織部は自嘲するように続けた。 「まあ、自分に似合わないのは自覚してるけど」 「なんだよ、好きに似合うとか似合わないとか、関係ないだろ」 「……そう」  織部は、下を向いてしまった。  沈黙に耐えられず、俺は喋りだした。 「俺は昔から好きになるキャラ、敵ばっかりでさ。小さい頃変だーって言われたこともあったな。気にしたこともあったけど、もう気にしないぞ! 間違いなくワルだけど、信念は持ってるっていう敵が好きなんだよ、俺は」 「あーなるほど、それでエレテスか……。ほんと、引けて良かったね。これを逃すと手に入らなさそう」 「そうそう、そうなんだよ!」  力強くうなずく俺に、織部は少し微笑んだ。笑ったところは初めて見たかもしれない。 「……俺は、主人公好きになることが多い。元気で人のために一生懸命な姿見てると、元気が出るっていうか」  織部がそう言った。それから俺たちはしばらく、今まで好きだった作品の話をした。 「前の学校では、あんまりヒーローものとか好きって言い出せる雰囲気じゃなくてさ。久しぶりにこんな話できた。ありがと」  帰り際に織部はそう言った。 「これが最後みたいな雰囲気出すなよ……。また話しようぜ」  そういうと織部は目をまん丸にしたが、うなずいてくれた。
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