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ゴミクズ
手を繋いで遊園地に行ったり、休みの日に夕陽の沈む海を見に行ったり、お祭りに浴衣を着て褒めてもらったり、そんなデートがしてみたかった。
貴方が叶えてくれないことは、私の彼氏じゃない人が嘘みたいに舞台を用意して、役柄もこなしてくれた。
だから、本当に楽しいって気持ちがわからないまま、私は一生懸命に楽しいを演じて笑っていた。
この観覧車でキスをするなら貴方が良かった。
この海で砂浜に指で名前を書くなら本名が良かった。
この浴衣を着るなら藍色の方が良かった。
もしも、もしも、もしもでいっぱいな恋は、不満だらけなのに終わらずに、私にお揃いのネックレスを買わせた。
どこかで、離れて、誰かと、何をしていても。
これが私の分身で、こっちは貴方の分身で。
まるで一緒にいるみたいに想いたいねって。
そんな風に言っても、貴方は素知らぬ顔をして、私のお尻を揉んだりするから、全く気まぐれなんだ。
もういいよ、つまんない。
拗ねて、ネックレスをゴミ箱にぶん投げた。
でも貴方は私よりも弱い弱い生き物で、すごく誰かの愛を求めてる。
そのまんまの貴方を受け入れて、全部が好きよ、完璧なダーリン、そんな言葉だけしか欲しくないのね。
ワガママでえっちでどうしようもないんだから、捨てられるのが寂しくて自分が可哀想で泣いた。
ただ、君が欲しかっただけでしょ、そんな相手が欲しかっただけでしょ、俺じゃないんでしょ。
うつむく貴方が、あまりにもおバカさんで愛おしいのは、私が守ってあげないと死んじゃいそうで面白いから。
私の大事な困ったくんは、私の為には泣かない。
私の大事な困ったくんは、私のことを泣かすのに。
私の大事な困ったくんは、私を女神だと言った。
そんなわけないのにね。
その言葉で縛ったね。
私を女神でいさせるように仕向けたね。
なんでも私のせいにしたくせに。
最後の日にネックレスを持ってきた。
ゴミ箱から拾ったの知らなかった。
俺がクズじゃなかったら。
そんなことを、呟いた。
お似合いだった私たち。
だって、ゴミとクズだから。
だけど、どちらも捨てられる運命だから、ただただお互いその通り、都会の人混みでちりじりになって行くの。
私はもう「そんなことないよ、貴方は立派、頑張ってるもの」とは言わなかった。
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