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「知ってたよ」
君がどんな気持ちで、海を見ていたのか。
うち上がる花火を、私の浴衣姿を、綺麗だねと言っていた。
でも、知ってたよ。
本当は、誰のことを想っていたのか。
繋いだ手は、幼い私を通して遠くへぬくもりを届けていたの。
ごめんね、と笑ってた。
屋台で買ってきてくれたたこ焼きで、許した。
あの日だけの、彼氏だった。
あの日だけの、彼女だった。
また、学校でね、と言ったのに。
3学期になってから、君は一度も私に話しかけて来なかった。
こちらに視線を感じる時。
私が、誰と一緒にいたか。
それだけで、わかってた。
知ってたよ。
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