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5.春の峠道で二人
(春の峠道で二人)
春、三月も終わりごろ……
もう雪が積もる心配もないかと、思わせる陽気を感じさせる今日この頃……
でも、時よりマイナス気温で驚かされる。
でも、今日は快晴の暖かな日曜日……
鈴子と雪子は、病院の帰り道、あの峠道を歩いていた。
峠の道も、もう雪は消えていた。
峠の道の頂、いつものベンチに二人、腰を下して、一休み。
今日は街が綺麗に見渡せる。
でも、遠くの山々は、まだ真っ白で、手が届きそうなくらいに近くに見えた。
鈴子は、寄ってきた兎にサンドイッチをちぎって投げてやりながら、雪ん子に話した。
「そう言えば、隣の空き家になっていた家ねえー、娘さんが東京から帰ってきて住むことになったそうよー」
鈴子は、魔法瓶のポットのお茶を二つのカップに注いだ。
「去年、娘さんのお母さんが病気で病んでいたときに、看護で帰ってきていたけど、十二月に亡くなられて、それから空き家だったけどね、その娘さんの子どもが今度、中学に上がるということで、こちらに引っ越してくるそうよ……」
兎は、少し離れたところで、美味しそうにパンを食べている。
遠くに見える市街地にも、雪は消えているようだった。
街の中を車が列をなして走るのが見えた。
「じゃー、私と一緒ね。男の子、女の子?」
雪子も兎にパンを投げてから訊いた。
「お葬式の時に、ちょっと見ただけど、可愛らしい女の子だったよー。仲良くなれると、いいねー」
「旦那さんは、いるのー?」
「お爺さんの話だと、別れたそうよ……、別れたから、こちらに帰ってくる気になったのね。その娘さんも綺麗な人だったよー、親子だねー」
「あら、お母ちゃんも、綺麗よー」
雪ん子は、鈴子の手を取って、頭を鈴子の肩に乗せて言った。
鈴子は、吹き出しながら……
「ありがとうー、でも、これもお爺さんから訊いた話だけど……、昔、お父さんとお父さんの弟さんと兄弟で、彼女を取り合ったそうよー」
「じゃー、お母ちゃんのライバルじゃない……」
鈴子は笑って、下界を眺めながら……
「そうね……、……」
「お父さんとは、どうして一緒になったのー?」
「えー、それを話すと、長くなるねー」
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