7.鈴子と将と

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7.鈴子と将と

(鈴子と将と) 「二人で露天風呂に入って……、それから、どうしたの?」  雪子は、興味津々で訊いた。 「それで、夜間診療所に連れて行ってもらって、ロッジで一緒に泊まったの……」 「二人同じ部屋で……?」  鈴子は、微笑みながら、雪子を見ないで恥ずかしそうに話した。 「彼が、個室の方が動きやすいからいいだろうーって、だから、それなら一緒に泊まってって、私が頼んだの……」 「凄い、積極的ねー、それで、一緒に寝たの?」  雪子も、露骨な表現と二人の成り行きを想像して、少し顔を赤らめた。 「……、そう、でも、一緒に寝たけど、もちろん、布団は別々で、足、悪いし、何もできなかったわよー」 「ほんとに? それは残念……、それから、どうしたの?」  雪子は、鈴子に寄り添い、じゃれるように腕を組んだ。 「次の日……、目が覚めたら、茂みに置いてきたリュックがあったわ。彼が私の寝ている間に取りに行ってくれたのね……」 「なかなか、カッコいいわねー!」 「それで、もっと嬉しかったのは、車で東京の家まで送ってくれたのよ。片足で、リュックもって電車で帰るのは大変だろうって言って……」 「それは、もうお母ちゃんのことが好きだったからじゃないの? もし、男の人だったら、絶対にそこまでやらないものー」  雪子は、将の心を想像していった。 「そうねー、私も山でおんぶしてもらった時から、好きになっていたかもしれないわねー」  鈴子は、もし好きでもない男だったら、拒絶していただろうと、考え直していた。 「将さんは、いつから好きになったって言っていた?」 「私の裸を見た時からだって……」 「やっぱしねー!」  兎は、パンの切れ端を食べ終わると、いつの間にかいなくなっていた。  晴れた日の昼下がりの午後、春の足音が聞こえてくるような峠道だった。 「それで、弟さんはどこにいるの?」 「さー、わからないのよー、加代さんが東京に行っちゃってから、しばらくして誠さんも、この町を出て行ってしまったから、それから今まで一度も帰ってきてないのよー」 「それじゃー、お兄さんが結婚したことも、武が生まれたことも知らないのね」 「多分ねー、一度、スイスから絵葉書が一枚届いたことがあるそうよ。だから海外かもしれないわね。生きているなら帰ってきてほしいわー」 「でも、それ一度っきりなんでしょう。それなら、どこかで死んでいるかもしれないわね!」 「それも困るわねー、帰ってきてもらわないと、お父さんが、あんなだから、お爺さんだけでは、リンゴは大変よー」 「それなら、私、できるわっ! 病気を治すのも、幸せを作ることもできないけれど、人探しは得意よー、だって雪ん子だもの、雪のあるところ、雨の降るところ、水のあるところ、どこにでも私はいるから……、でも、生きていないとだめだけどねー」 「それは、そうよねー」  雪子と鈴子は、顔を合わせて笑った……
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