15 インタビュー6

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15 インタビュー6

「ええ、そうです。直接見たわけではないので断言はできませんが、自殺者を中で見たって噂はありました。」  今でもあるのかな? 「封鎖される前のことです。封鎖された後でも、ときどき耳にしましたよ。それで封鎖されたかどうかはわかりませんが……。面白い解釈もありますよ。本当の時空構造がどんなものかはわかりませんが、少なくとも目に見える空間三プラス時間一以上の数の時空で元々の宇宙が構成され、それが真空の相転移とか、力の分離とかによって現在の形に落ち着く際、残りの時空が極端に縮小化して――コンパクト化して――現在の時空の中に折り畳まれたとするでしょう。その時空を、あるいは空間を移動用に利用できると考えるんです! 『白』の中では、それが可能だと……。もちろん死人が蘇ることはないので偶々『白』から『白』への移動を見た人が、そう思っただけでしょうが……。自らの思い入れのために……。でも時間が逆に流れれば死体が蘇ることもあり得ますね。想像はできないですけど……。もっとも体感時間と時間の矢の関係が人間には時間が進む方向にしか感じられないとして現在の宇宙が収縮期にあるとすれば外から見れば逆まわりの世界が成立しているのかもしれません。抽象っていうのは物の捉え方ですからね。具象の前に抽象はありません。『白』自体は非常に珍しい現象かもしれませんが、抽象の現われっていう考え方はどうも……。抽象化機械っていうのでしたら、それはそれで面白いとは思いますけど。ああ、そうですね。コンパクト化された空間が『白』によって消費されるとすると、それが再生産されない限り、逆まわりの世界は不可能になりますか!
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