6 侵入者3

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6 侵入者3

『白』の中では時間の流れが違うという説を聞いたとき、虚数iと同じように時間は存在しないと唱えたある哲学者の話を思い出す。あるのは常に現在で、いわゆる未来は未だ存在しない現在、過去は消滅した――過ぎ去ったではない――現在なのだという。しかし記憶を有する高等生物にとって時間の概念は有用なので積極的に利用したと解釈している。真偽のほどはわからない。答を確認できないの究極の学問が哲学だからだ。そして、すべての哲学は存在のありようについて語っている。極論すれば、『ある』と『ない』について語る!  そういった目で『白』を見てみると、これは時間の減衰なのではないかとも思えてくる。完全に止まれば一瞬で、かつ永遠ということになる。真の永遠には変化がないので、その意味では一瞬と同じだ。永遠に変わらないから永遠なのだろう。だから、それは止まっている。一刹那。  しかし時空自体が変質してしまえば、無機物だろうが、そうでなかろうが、間違いなく影響を受ける。哲学的に時間が在る無しに関わらず重力方程式は古典的に成立するが、その一項目の性質が変わってしまうというのだから……。  たとえば時空がカンバスだとして、それ自体が変質してデコボコになれば、その上に描かれた人物は曲がってしまうし、もっと普通に言えば、立っていられなくて転んでしまう。家も潰れる。けれども変質の中にいる対象物には、それが認識できないということも考えられる。ブラックホールの中に落ちていくモノの時間は永遠だが、当事者にとっては別の意味で一瞬だ!  宇宙は複雑過ぎて『白』の中では普通の物理法則は成立しないのかもしれない。あるいは、そのために『白』が発生した、もしくは何らかの意思により発生させられた?
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