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一緒が良いの
「どう言われたって無理。もし今許しても私カケルのこと一生信用できないと思う」
うなだれるように下を向き涙を流すカケルにそう伝え、大きく息を吐いたユリカはコーヒーを口に含み、じっと窓の外を見つめた。
外を幸せそうなカップルが通りすぎていく。窓ガラスには隣に座る人の顔が反射し、ちらりとこちらの様子をうかがっているのが分かった。
「泣きたいのはこっちだって…」
「俺が間違っていた。悪いところ全部直すから……」
「あのさぁ……」
走馬灯のように記憶の断片が頭の中をめぐり、ユリカはカッと熱くなった。
「カケル、自分で言ったんだよね?私より沙彩の方がずっと良いって。私の友達だった子に平気で手を出しておいて、よくそんなこと言えるね」
「俺は本当に騙されただけで……」
「私、言ったよね?沙彩がカケルに興味を持っているのは私の彼氏だからだよって」
沙彩は昔からそうだった。服や化粧品、部屋の雑貨まで何でも私とおそろいにしたがって、気づけばいつも私より上手に使いこなしていた。
疎ましく思う時もあったけれど
「ユリカと一緒が良いの」
という沙彩の言葉を、どこかかわいいとも思っていた。彼氏のカケルが沙彩に接近していることに気づいたその時までは。
「私がくぎを刺しても聞く耳をもたなかったのはカケルだからね。どうせ、私と別れるって言ったら連絡とれなくなったんでしょ?それで私に許してもらおうと思った?都合よすぎじゃない?」
「それは……」
「もう無理だよ、私たち。二度と連絡してこないで」
「ちょっと待って……!」
「最後だから、ここは私が払うから。手切れ金だと思って」
伝票を持ち、その場を去ったユリカの姿をカケルは目で追ったが彼女が振り返ることはなかった。
肩を落としその場から動けなくなったカケルとは裏腹に、店を出たユリカはまっすぐと前を見据え歩き出した。
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