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「ダニー」  頭の上に無数の疑問符を浮かべていると、二人の兵士とは別の男の声が聞こえてきた。  湊の前にいた青い眼の兵士ははじかれたように腰を上げ、彼らと同じゴールドの刺繍が輝くジャケットを羽織って現れた第三の男に対し敬礼のポーズを取った。現れた男の軍服は湊を発見した兵士二人のものとは違い、上級兵士の証として右肩から胸にかけて金糸で編み込まれた飾緒がつるされていた。 「連隊長。ご足労、感謝いたします」  ダニーという名であるらしい青い眼の兵士が言うと、連隊長と呼ばれた第三の男は一つうなずき、湊の前に立った。  湊は思わず息をのむ。目が(くら)みそうになるほど、男の容姿は美しかった。  近くで見るとなお精悍な顔立ちは肌つやがよく、部下の兵士二人、それから湊とも年齢はあまり変わらないように感じる。三十を少し過ぎたくらいか。あるいは二十代だと言われても驚かないくらい若々しい。  有り体に言えば超絶美形であるその上級兵士はしかしニコリとも笑うことなく、冷徹な赤い瞳で冷ややかに湊を見下ろした。 「こいつか、発見した不審な男というのは」 「左様であります。先ほどまで意識を失っておりましたが、たった今、目を覚ましまして」  ダニーが説明を加えると、連隊長とやらの目つきがさらに厳しいものへと変わった。  透きとおる宝石のように美しいふたえの瞳は燃えるような赤色なのに、熱とは無縁の凍てつくような眼光が容赦なく降り注ぐ。制帽の下から覗く短髪はシルバーに輝き、肌は白く、ずっと見上げていると首が痛くなってくるほど背が高い。  呼吸が止まりそうになる。湊はその男から目をそらせず、瞳の赤に吸い込まれるように見つめ続けた。  底冷えするような恐ろしい視線を向けられていて、ちゃんと恐怖も感じている。  なのに、怖さよりも惹かれる気持ちが(まさ)っていた。赤い瞳。まばゆい銀髪。白い肌。整いすぎているくらいの面立ち。  まるで海外の有名俳優のようだ。言葉はいらない。心を無にし、ずっと見つめ続けていられる美しさ。  なんてカッコいい人だろう。こんな人、今まで出会ったことがない――。
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