パフェのある構図

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 僕らは、目当てのパティスリーに向かった。店に着くまではなかなか緊張が解けなくて、何を話したかは記憶にない。  店に入り席に座って向かい合うと、僕は少しずつ自分を取り戻していった。美咲にはクラスメイトだったかのような不思議な馴染みやすさがあって、余計な気を使わなくて済んだ。  パフェは、同じものを注文した。一番人気のリッチ・ベリー・パフェだ。  運ばれてきたのは、その名の通り見た目も豪華なパフェだった。数種類のベリーと生クリーム、チョコアイス、ナッツが何層にも重なった大人っぽい立ち姿。  美咲は「わぁ」と小さな歓声を上げると、スマホを取り出した。眉間に皺を寄せながら真剣に写真を撮る姿がおかしくて、思わず吹き出しそうになった。  写真の背景に僕が写らないように席をずらすと、美咲は「あ、大丈夫ですよ」と言った。その「大丈夫」は、僕が写らないような角度で撮ったということなのか、写っていても大丈夫ということなのかすごく気になった。 「美味し、ん……これは何だろう、シナモンかな? 分からないけど、美味しい!」  美咲はくんくんと鼻を動かしながら、探偵のような遠い目つきで首を傾げる。僕も負けじと感想を言ってみる。 「うん、チョコソースがほろ苦くて、なんか大人って感じだね」  パティシエの仕掛けを熱心に探りながら、僕らはパフェを楽しんだ。
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