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突然の破局
「アナスタシア、今日限りで君とは別れることにするよ」
私は、ミカエルが何を言っているのかまったく理解できなかった。
頭の中で無機質な音声が繰り返されている。
今日限りで、別れることにする……。
どのくらいの時間が経過したのだろう。実際はそれほど長い時間ではなかったはずだ。
しばらくして、私はようやく彼の言葉の意味を理解できるようになってきた。
「どうして? 私が何かいけないことをしてしまったの?」
自然に出てきた第一声はこんな言葉だった。
自分でもどうしてこんな言葉が出たのかわからない。
反射的にそう言ったのだ。
「……」
ミカエルは私の問いに答えず、口を閉ざして黙り込んでいる。
何かを算段している様子に見えた。
確かに私たちの関係は誰もが納得するようなものではなかった。
ミカエルは男爵であるドルー家の三男。
対して私は、ただの平民娘。
皆が言った、釣り合うはずがないと。
けれど、皆が駄目だと言おうとも、私は信じていた。私たちの愛は、身分の差など楽々と超越するであろうことを。
今にして思えば、甘かったとしか言いようがない。
二人の出会いはこうだった。
場所は忘れもしない王宮舞踏会。私はそこの給仕として採用された。
「やった! ついにやったわ!」
私は友人に喜びを爆発させた。
「よかったねアナスタシア、これであこがれの舞踏会を間近で体験できるわね」
そう、憧れの舞踏会をついに体験できる。私の心は踊っていた。夢うつつの状態で単純に舞い上がってしまっていたのだ。
そんな高ぶった気持ちの中で現れたのがミカエルだった。
今でもはっきりと覚えている。
飲み物をのせた銀盤を持って歩いていると、彼が声をかけてきたのだ。
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