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あるところにニークという一匹のめんどりがいました。
ニークはとてもわがままなので、嫌われ者でした。
ある日ニークがえさを探しに川まで出かけると、
ちょうど狩りを終えて、たくさんの魚を持っためんどりを見つけました。
ニークはそのめんどりに向かってこう言いました。
「美味しそうな魚を持っているじゃないか。それを全部オレによこせ。」
めんどりは困った顔でいいました。
「それはできないよ。
家族がお腹を空かせてこの魚を待っているんだ。」
しかしニークは聞く耳を持ちません。
「うるさい。とにかくオレはその魚が欲しいんだ。」
そう言ってめんどりの持っていた魚を全部掴むと、全部食べてしまいました。
お腹が満たされてたニークは、自分の家へと帰って行きました。
帰る途中で多くの鳥が集まる水場を通りかかりました。
そこで一匹の美しいめすどりを見つけました。
ニークはその美しいめすどりが気に入ったので、妻にしようと思いました。
めすどりは「わがままな人は嫌いよ」と断ろうとしましたが、
わがままなニークは聞く耳を持たず、
そのめすどりをむりやり妻にしてしまいました。
ニークが妻と暮らし始めてからしばらくたったある日、
突然ニークの前に天使が現れました。
天使はニークにこう言いました。
「もうすぐあなたの元にとても美しい赤ちゃんがやってきます。
その赤ちゃんは天女の子です。
天女の子とともに美しい心を持つ事ができれば、
あなたも幸せな生涯を過ごせる事でしょう。」
数日後、妻が卵を産みました。
その卵は綺麗な金色の卵でした。
ニークは、こんなに綺麗な卵は見た事がありませんでした。
やがて金色の卵から、メスの赤ちゃんが生まれました。
金の卵も見た事がないほど美しいものでしたが、
その卵から生まれた赤ちゃんも見た事がないほど美しいものでした。
ニークはその美しさに満足し、
その美しさと、この子が「天女の子」である事をみなに自慢してまわりました。
あっという間に天女の子のうわさは広まり、
天女の子を一目見たいとたくさんの者達が集まるようになりました。
そこでニークは、自分が認めた者のみ天女の子と会わせてやると言いました。
するとみなニークを天女の父として崇めるようになり、ニークの命令に逆らう者はいなくなりました。
綺麗な宝石や上質な魚等をニークに差し出す者も現れました。
ニークは気持ちよくなり、今まで以上にわがままになりました。
やがて天女の子は大きくなり、それは美しいめすどりになりました。
天女の子が縁付くと、夫と暮らすためにニークの家から出て行きました。
天女の子がいなくなると、それまでニークを崇めていた者達は、急にニークの言う事を聞かなくなりました。
みんな心の中ではわがままなニークが嫌いだったのです。
ニークの家に訪れる者はいなくなり、
天女の父である事に驕っていたニークは、一人ぼっちになってしまいました。
おしまい
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