5章 四季の過去

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5章 四季の過去

四季の通っていた学校は、中高一貫校だった。 中学生の時から美術部に所属するくらい 絵を描く事が大好きな四季は、同じく絵を描く事が 好きな仲間に囲まれてそれなりに学生生活を 楽しんでいたはずだった… 幸せな日々は急に日常から去っていく… ある日、いつもの様にお菓子を作ってきた四季。 部員に家から作ってきたクッキーを配ろうと 話しかけた時。 「おっはよー、クッキー焼いて…」 「四季の絵って自信満々で嫌いだったんだよね」 「わかる。上手くて当然みたいなね。」 「まりちゃんの方が綺麗な繊細な絵だから そっちの方が選ばれるべきだったよ…」 「四季って名前は綺麗なのに、心は汚いよね。」 部長のまりあを囲んで慰めあって私の悪口大会が 始まっていた。入口に私が居ることに 気づいているのに、謝ることもせず、、、 「何?慰めのつもりでクッキー?」 と呟いてきた。料理をするのが趣味な私は いつも作ってきている。なのに何その言い方… 「はぁ…そんなわけないじゃん。 いつも持ってきて…」 グシャッ。突然何かが割れる音がした。クッキーだ。 「いらないから。こういうの。」 前まで美味しいって褒めてくれた癖に… 私は、怒りの感情でいっぱいになってしまった。 無意識に、本当に悪気なく 「賞を取れなかったのは実力の差じゃないの…」 と言ってしまっていた。 そんな事ない。まりあの絵は優しい絵で綺麗な 色使いをしていて大好きな絵だった。本当に。 だけど言ってしまった。傷つける言葉を。 その日から、私は部員から無視られるようになり… ある日、私の描いた作品がビリビリに破られる 事件が起こり。私は世界の全てが嘘に感じて 生きるのが嫌になり、学校に行けなくなって この病院の精神科に通うことになっていた…。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「ってな感じかな…まぁ、私も悪いよね」 軽い話にしようと、笑顔を作るが上手く笑えない。 「あんな綺麗な絵をビリビリに破いたの?」 なぜか怒った表情をする、空。 「…そこじゃないでしょ笑」 「そこが1番ムカついたよ。四季の絵が好きだから」 褒めてくれて素直に嬉しかった私は さっきまで、張り詰めていた表情が 自然に笑顔になっていた。 「少し笑顔になったね」 優しい顔で微笑む。空は気持ちを和らぐ天才だ。 ふわふわしてる雰囲気がある。 それが、とても助かる。 「隣の芝は青く見えるもんだよ」 「どこで覚えたのよ、その言葉」 笑いながらつっこむ私。あまり深く聞いてこない。 変な慰めや、同情もしないで聞いてくれる 空の優しさが凄く有難かった。 出来れば、このままずっと一緒に居たい。 心の中で願いながら、見つめた空は 優しい色をしていた。
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