プロローグ 咲良と空

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プロローグ 咲良と空

「今日こそ、死んでやる…」 そう決めた私は、飛び降りようと病院の屋上に 来ていた。覚悟は決まっていた。 「飛び降りるの?」「こんなにいい天気なのに…」 …いい天気だからムカついてたのに この少年のせいで決意が揺らいでしまった。 というか死ぬ気が無くなった。 「はぁ、、、」 深い溜息を吐きながら飛び降りようとした場所から 数歩だけ下がってしまう。 「ほら、やっぱり生きたいんじゃんっ」 明るそうに呟く少年。…ムカつく。 「…別に生きたいわけじゃない。気分が 乗らなくなっただけ」 「生きるとか生きないって気分で決めてるの?」 何なんだ。何で見知らぬ少年に説教されてるの。 「…うるさいな。どうだっていいじゃん。」 「んー。こんな綺麗な世界知らないまま  死ぬのは、もったいない気がするよ?」 どこが綺麗なんだろ。みんな腹黒くてどうせ汚い。 「そうだ、僕と一緒に1年間季節を 感じる旅に出よう」 そう言うと少年の笑顔が光り輝き始めた… 正直めんどくさい。。。さっき死にたかったばかりの 私には、そんな旅を楽しめる余裕は無い。 よし、無視しよう。私は来るっと 出口に向かおうとする… 「え、帰るの??死にたかったんじゃ?…」 …本当にめんどくさいこの子。。。 「さっき、死ぬ気失せたって言ったでしょ。 それと私は季節が感じられるほど余裕ない。」 「…僕には時間の余裕がないんだ、、」 そう言った少年の顔は、苦笑いにも似た 笑顔だった…。そんな顔を見てしまった私は、 『時間の余裕がない』という言葉の意味を あの笑顔で、理解してしまった。。 つまり、『余命がもう、幾許もない』 という事だろう。 「…でも死ぬ気失せたから時間はあるよ。私。」 その瞬間、ぱっと表情が明るくなり 「いいの??」満面の笑みで聞いてくる少年。 少年の笑顔は、純粋で真っ直ぐ過ぎて私は 断れなかった… そして私と少年の不思議な季節を巡る旅が始まった。
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