ワンダーウォール

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♪♪♪  いきなりスパルタ過ぎたかな。でも初めてにしては上手く滑ってると思ったから、置いて来ちゃった。澤村は私が見た限り、一度も転ばずに降りて来た。すぐにターンも出来るようになるかな。  片足を外して平らなところで歩く練習をしてから、レストランで休憩することにした。  「午後はリフトに乗って滑ってみようか」  「えー! 怖いよ」  「大丈夫だよ。初心者コースだから。さっきみたいに歩いて登ってたら疲れるでしょ」  一緒に乗って、一緒に降りるから安心してって何度か言って、ようやく納得してくれた。そうだった、確かに私も最初は怖かった。だけど慣れたら楽しくなるんだよな。  やっぱり三月だからか、いくらゲレンデでも晴天下では暑い。レストランでカレーを食べた後、私はウエアのチャックを開けて休んでいると、炭酸が飲みたくなってきた。  「コーラ買ってくるわ」  澤村に声をかけると、澤村も一緒に席を立った。  先に席に戻って待っていると、後からゆっくり歩いて戻ってきた澤村。持って来たのはホットチョコレート……。  「マジかよ」  「だってまだ寒いよ」  意外に冷え性なのか、だからって私の前でそんな甘いもの……まあ、いいけどさ。  「ココアの方が良かった?」  「どっちも同じだよ」 〜〜〜  午後は二人でリフトに乗って練習する。まだリフトが怖い奈緒は、ボードを手に持って歩いて乗り降りする。  ボードを装着して滑り始める。滑り出しだけは何故か急斜面になっているが、あとは午前中の練習場所のように広くなだらかな斜面が続く。  奈緒はさっき教えてもらったやり方で滑っていく。響はその少し先を奈緒のペースに合わせて、ゆっくりターンしながら滑っていく。響の姿を見ながら、奈緒は気持ち良さそうに滑ってるなあと、ほっこりした気持ちで追いかけていく。  あっという間に降りてきた二人は、もう一本滑って終わりにしようと、もう一度リフトに乗る。  スキー場にはちらほら人がいるが、滑っていてもさほど気にならないぐらい余裕がある。初心者コースでさえ、ほぼ貸切ぐらいの空き具合だ。  また滑り出した二人だが、響は奈緒を置いて自分のペースでどんどん下に降りてしまった。
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