1079人が本棚に入れています
本棚に追加
待ち侘びた連絡
それは急な連絡だった。
〈明日って時間取れますか?〉
賢志経由で来た連絡。
彼女からの連絡ということはトートバッグを染色した人物に関することだろう。
〈染色した彼とコンタクトが取れました〉
メッセージで続報が告げられていく。
既読になっているのを確認しつつ送っているのだろう。
〈明日なら時間が取れるけど、またすぐにフィールドワークに出てしまうそうです〉
次々と送られてくるメッセージを見ながら僕は自分のスマホで兄に連絡を取る。
〈明日、例の人に会えるそうです。
約束しちゃっていいですか?〉
送信するとすぐに〈了解〉との返事が来るけれど〈自分は行けないから安形さんにお願いする〉と続く。静流君は明日は外せない案件がある様だ。そのメッセージを隣で返信を待っていた賢志に見せる。
〈明日、大丈夫です。
お願いします〉
賢志の返信にすぐに既読が付く。
〈彼の希望で面会場所はうちの学食ですが大丈夫ですか?〉
〈了解です〉
ぽんぽんとメッセージでのやり取りが繰り返される。どうやら染色した人物は男性らしい。
〈では11時にうちの学校の食堂で。カフェとか食堂とか紛らわしいのであとで地図送りますね〉
そうして翌日の予定はあっさりと決まった。
待ち望んでいた面会に心が弾む。
「明日って2人で行く?3人で行く?」
賢志が聞いてくる。
「3人?安形さんもトートバッグ気に入ってたみたいだけど、とりあえずは賢志と行って許可が出たら安形さん呼ぶ?
彼女は事情知ってるけど、彼はいきなり3人で、しかもどう見ても学生に見えない安形さんがいたら驚くんじゃない?」
と僕が答えると「言っておけばいいんじゃない?」と追加でメッセージを送ってくれる。
〈安形さんも一緒です〉と送ったメッセージには〈OK〉と可愛らしいスタンプで返信が来た。
〈染色した作品をいくつか持ってきてくれるそうです〉
少し遅れて届けられたメッセージは僕の心を躍らせたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!