スタンプ

1/1
前へ
/157ページ
次へ

スタンプ

 食事が終わり、賢志がそろそろ部屋に戻ると言うので僕も自室に戻る。  静流君に会いたかったけれど、この時間に帰ってこないと言うことは今日も遅いのだろう。  最近は遅く帰ってくることが多く静流君の身体が心配になってしまう。ネットショッピングのことも聞きたかったけど、急ぐ用ではないのでそれまでに購入したいものを絞っておこう。  と思いつつ、それでも今やらないといけないのは試験勉強だったと思い出す。  時間を見ると微妙な時間で、試験勉強に集中してしまうと日付が変わる前に入浴ができなさそうなので、先にお風呂に入ることにした。  本来、お気に入りの入浴剤を入れてゆっくりするの楽しみな時間なのだけど、今日はそれを諦める。勉強の時間を作るためには仕方ない。と考えながらも、昼間見たアロマオイルを思い出してしまい検索したいもののリストに入れておく。  ゆっくりできない時はアロマオイルを入れるのも良いかもしれない。  急がないと、とは思いながらも結局ゆっくりしてしまった。  反省しつつ、身支度を整えて机に向かう。部屋を温めすぎると眠くなるためエアコンは抑えめにして着る毛布で調整をする。足首まである長いものだから足元が冷える心配がない。入浴後に勉強をする時の必需品だ。 「じゃ、始めようかな」  自分に気合いを入れるために声に出してみる。こう言うのは形から入ることも大切だ。  と気合いを入れたのに机の上に置いておいたスマホにメッセージの受信を知らせる表示を見つけてしまった…。  入浴中に来ていたのだろうか?  急いでメッセージを開く。 〈今日は挨拶のあとは借りた部屋でゆっくり過ごしました。  明日からは作業です。  おやすみなさい〉  業務連絡の様なメッセージ。  それでも嬉しくて知らず知らず微笑んでしまう。 〈お疲れ様です。  ゆっくりできた様で安心しました。  機会があればフィールドワークのお話、聞きたいです。  おやすみなさい〉  色々と聞いてみたいことはあったけれど、距離感がうまくつかめず変な文章になってないか不安になってしまう。  それでも素直な気持ちなのだから、と思い直し送信する。  緊張しながらメッセージを送り、今度こそ勉強をと思った矢先に再度届いたメッセージは〈おやすみ〉のスタンプだった。  …何だか嬉しくなってしまう。  僕も何かスタンプを…と思ったもののスタンプを使うことがなかったため初期設定のスタンプしか無かった。  明日、賢志に相談してみよう。  その日は結局勉強が手に付かず、早々にベッドに入ったのだった。  明日は頑張ろう!
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1064人が本棚に入れています
本棚に追加