僕の友達

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僕の友達

 毎日はゆっくり過ぎて行く。  紬さんからは毎日メッセージが届く。  朝と夜の1日2回。 〈おはよう〉と〈おやすみ〉のメッセージと近況を伝える短いメッセージだ。  こちらからも短いメッセージを送り、最後はスタンプを返し合う。  挨拶だけならスタンプで事足りるものの、毎日交わす一言のおまけにスタンプがあるような感じだ。  言うなら名残惜しさの表れ…だと僕は思っているけれど、紬さんはどうなんだろう?  スタンプはあの後すぐに賢志に相談して一緒に選んでもらった。好きな漫画やキャラクターを聞かれたものの、特に思い浮かばないから無難なところで夢の国のキャラクターのスタンプで落ち着いた。 「プリンセスもあるよ?」  とニヤニヤして言う賢志は無視しておく。  僕は別に〈姫〉呼びを受け入れているわけではないんだ。  驚いたのは〈名画〉をモチーフにしたスタンプが有ったことだけれど…面白過ぎてやめておいた。  世の中にはまだまだ知らないことが沢山あるのだ。  スタンプと言えば胡桃がスタンプを使わなかったことが不思議で、ちょうどメッセージが来た時に使わないのかと聞いてみたら〈光流が使わなかったからこっちも使わなかっただけ〉というメッセージの後で可愛いスタンプを連投してきた。  中には自分で作ったらしい、赤ちゃんの写真を使ったスタンプもあり驚かされる。 〈何これ?〉と驚いた僕に〈自分で作れるアプリもあるんだよ〉と教えてくれた。ただし、誰にでも送るわけではなくて、ごく親しい関係の人にしか使わないとのことだった。  そう、胡桃はお母さんになったのだ。  海外での暮らしが少し不安と言っていたものの、行ってみれば案外性に合ったらしく楽しそうにしている。  パートナーの彼と〈番〉になったおかげでフェロモンの事で悩まされることも無くなり外出もしやすくなったと言っていた。  もちろん1人での外出は控えてはいるものの、あちらで知り合った人達との交流が楽しいと教えてくれる。  あちらに行って割とすぐの妊娠だったけれど、その関係で知り合った人も多く毎日忙しくしているらしい。いわゆる〈ママ友〉になるのだろう。 〈光流がスタンプなんて珍しいね。  何かあった?〉  相変わらず鋭い。 〈新しく知り合った人がスタンプ使うから賢志に教えてもらった〉  そう送ると驚きを表すスタンプが送られてきた。つい笑ってしまう。 〈友達?〉 〈知り合い…かな?〉 〈いつ?〉 〈少し前〉 〈どんな人?〉 〈染め物やる人〉  悩むポーズのスタンプが送られてくる。  経緯を説明してもいいのだけど長くなりそうで、どう伝えたらいいか悩んでしまう。 〈サロン関係で知り合った人。  素敵な作品を譲ってもらった〉  写真を添付しておく。間違ったことは伝えていない。  すぐにうっとりした様子のスタンプが送られてくる。どうやら気に入ったらしい。  楓さんへのプレゼントしか用意しなかったことが悔やまれる。  機会があったら紬さんに譲ってもらえるか聞いてみようか…。 〈ごめん、光流。  詳しく聞きたいけど子ども泣いてる。  よかったら詳細送っておいて〉  メッセージと共にゴメンとスタンプが送られてくる。そのスタンプにOKと送り返し一旦終了する。  さて、どう説明しようか…。
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