僕の想い 兄の想い

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僕の想い 兄の想い

「そのまま気付かないふりはしないの?  いつもみたいに」  なんだろう、静流君が怖い。  もともと僕の処世術は静流君直伝だ。  だから色々とバレているのは承知の上で、静流君から〈良かれと思って〉紹介された相手も興味を持てずスルーしてきた事は多々ある。  それが気に入らないのだろうか…。 「そもそも連絡先を渡されたって事は相手は光流の連絡先知らないんだから光流から連絡したんでしょ?  オレにも賢志にも相談しないとか、珍しいよね」  うん、全てバレている。  バレている上で静観してくれていたはずなのに、それなのに今の段階になって反対されるのは納得できないし、したくない。  静流君の事だ、何も調べたりしないわけがないのだから、反対するのならもっと早い段階で言うべきなんだ。  思考が逆ギレ気味になってしまう。 「ストールを見た時から気になってたんだ。  どんな人が作ってるんだろうって、気になって仕方なかったんだ」  静流君と話すにしてはきつい口調になってしまう。今まで喧嘩もほとんどした事がないし、する理由もなかった。  いつも僕のことを慈しんでくれる兄だから、そもそも諍いなど起こらない。 「連絡先を渡された時に相談しようとも思ったよ。でも、相談して連絡を取るんじゃなくて、自分で考えて自分の言葉で話したかったから…」  言ってしまってから恥ずかしくなる。 〈意識してます〉と言っているも同然だ。  僕の気持ちなど静流君にはお見通しなんだろう。 「いつもみたいに静流君にどうしたらいいか聞きたかったし、賢志にどんな内容を送ればいいのか聞きたかった。  メッセージ考えながら今からでも相談しようかって、何度も思ったけどそれじゃあダメなんだって気付いたんだ…」  言いながら自信がなくなってしまい、声が小さくなっていく。  色々と思い出してまた自分が的外れなことをしているのではないかと不安になる。  やっぱり静流君を頼るべきだったのか…。 「それで?  オレが紹介したのってさ、ハッキリ言ってハイスペックのαばかりだったんだよね。  経済的にも他の意味でも光流のこと満足させられる相手を選んでたつもりだけど…そいつと何が違うの?  光流のこと囲って、甘やかしてくれるよ?」  冷たい声色に僕の気持ちを無視した言葉。  他の意味って何?甘やかしてくれるって、そんな事望んでない。 「将来、何するつもりかわからないけど染色の仕事で食べていける?  Ωの光流をちゃんと守れるの?」  正論と言うか、〈静流君が正しい〉と思っているだろう事で畳み掛けてくる。  こんな静流君は知らない。  正直、怖いと思った。  僕はそんなにも悪いことをしてしまったのだろうか?  僕は意志を持っちゃダメなの?  Ωはαに逆らっちゃダメなの?  何か言い返さないと、と思ってもなかなか言葉が出てこない。  悔しくて、唇を噛んでしまう。  悔しくて、涙が溢れてしまう。  それでも静流君に従おうとは思わなかった。
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