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「いや、あちらに行ってから、足場を作り、説得する。私を信じて連絡を待っていて。必ず帰るから」
「……はい。お待ちしています」
アーサーは、私の長い黒髪をなでながら、キスを落とした。
彼とこの丘で出会って、日時を決めて会う約束をするようになって、半年。
彼が決心したように、私も決心していた。彼には伝えないけれど。
「私以外の男を今後見てはだめだ。舞踏会は絶対に出席するなよ。伯爵にも君とのことを話しておく。私は本気だ。信じて待て」
アーサーは、約束するように、深い口づけと熱い抱擁を残して帰って行った。
「ロゼリア様。本当にあちらに内緒で行くのですか?」
馬の後ろについてくる侍女のエリン。
「もちろんよ。エリンだって、キースと離れたくはないでしょ」
キースは、アーサーの一番の従者。常に従っているから、彼もバージニアについていくのだ。
エリンは、キースに片思い。とはいえ、最近はキースもまんざらではないと思う。
もう少したったら、二人を取り持ってあげたいと思っていたのよね。
このままじゃ、本当にかわいそう。だから、エリンも連れて行くの。
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