旅立ち

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旅立ち

 ゴオっと言う音がして、丘に強い風が吹いてきた。  羽の付いた帽子が飛び、金色の髪がたなびいた。  青い乗馬服をすらりと着こなしたアーサーが、緑色の瞳を眇めて城下を見下ろしている。    二人でいつものように丘の頂上まで馬で来た。ここなら、だれにも見られない。  アーサーは、私を抱き寄せると黒髪をなでながら、息を吐いた。  「ロゼリア。二日前、バージニアから使者が来た」  エセンはバージニアに農産物などを輸出しているが、鉄鉱石などはバージニアから輸入しており、自国でエネルギー生産ができない。  常に侵略の危険にさらされているため、エセンのような同じ状況の他国は、バージニアに人質か婚姻関係によるつながりを作る。  アーサーの叔母がバージニアの王子に嫁いでいたが、先月亡くなった。  子供もいなかったため、今後の関係がどうなるかとアーサーが以前から気をもんでいた件だ。  「そうですか。私に話されるということは、決心されたということですね……」  アーサーの叔母が亡くなった時に、妹姫のマリー様を嫁がせる話が大臣達の間で議題にあがったらしい。  マリー様は16歳。社交界にデビューしたばかり。
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