第三章 弥春の決断

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「そう、重婚。正確には事実重婚(・・・・)だがな。現世での手続き的には父ちゃんと母ちゃんが婚姻届けを出していて、法的に認められた夫婦だ。でも、マーは死者だから書類上では結婚出来ねぇ。だから事実重婚なんだ。どうしてこういう形になったのかは良く知らねぇけど、父ちゃん達が若い頃に色々あったらしい。でもな、過去になにがあったとしても関係ねぇんだわ。ウチは家族で仲が良いし、父ちゃん達は双子を大事にしてくれる。世間的には変わってるかもしれないが、俺らにとってはこれが普通だ」 だいぶ端折っているけれど、大体こんなトコロだろ。 説明を終えたぬきを視ると、 『ふぅん……そうなんだ……』 言葉も短く複雑そうな表情だ。 「なんだよ、なんか言いたい事でもあるのか? あったって構わねぇけど、母ちゃんとマーに余計な事は言うな。どうしても言いたいっつーなら一緒には住めねぇよ」  たぬきちを気に入っている茉春(まはる)には悪いけど、母親2人を傷付ける訳にはいかねぇ(父ちゃんは男だし多少のコトはダイジョブだけど)。 『た、たぬぬっ!? なんでそういう話になるんだよ! 言いたいコトなんて別にないよ! あるのは ”思うコト” だけだ!』 「思う事?」 『あ……うん、その……なんだ、オレ……今の話、羨ましいと思ったんだ。母親が2人もいるなんて幸せじゃないか。オレの母ちゃんは……オレがまだチビだった頃に山火事で死んでしまった。母ちゃんはすごく優しい狸でさ、弥生とマジョリカにも負けないくらいだ。ホントだぞ』 …………そうか、 そういう意味でのあの表情(かお)だったのか。
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