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たぬきちは、背中を丸めてショボンとしていた。
母狸を思い出しだしたのか、鼻をグズグズすすってる。
ヤベェ、……やらかした。
昔、ガキだった頃。
聞かれるままに家の事をまわりに話すと、ヒソヒソされたり親を悪く言われたり、挙句の果てには嘘つき呼ばわりさていた。
あの頃のイヤな思いと面倒くささが、たぬきに対して張らなくて良い予防線を張っちまった。
「たぬきち、辛い事を思い出させたな。今のは俺が悪かった」
言いながら、少しかがんで手を伸ばす。
背中にふれればひんやりしてて、そのまま毛皮を撫でつけた。
されるがままのたぬきちは、
『たぬ……良いんだ。弥春は悪くないよ(チラッ)。オレの話をよく聞かないで早とちりして、”一緒には住めねぇよ” なんて、コワイ顔で言われたけど(チラチラッ)、それがすっごく悲しかったけど(チラッ)、志村家以外に行く当てもない非力な狸を捨てようとしたけど(チラッチラッ)、でもでも弥春は悪くない(チラチラチラチラ)。みーんなオレが悪いんだ(チラーーーーッ)』
か細い声で、俺をチラチラ何度も視ながらそう言った。
うわ……メンドクセ……なんだこりゃ。
この狸、口で言ってるだけで自分が悪いとは絶対思ってねぇよな……ま、合ってるけど、今回コイツは悪くないけど。
「っだよ、たぬきちは悪くねぇよ。俺が悪かったって言ってんじゃんか。今度ポテチでもなんでも買ってやるから機嫌を直せ」
『たぬ!?(キラーッ!)なんでもって本当か? じゃあじゃあ! ポテチはいらないから千円くれよ!』
「金!? そんなモンを要求するなんざ生々しいな。おまえ……たぬきのクセして千円をなんに使うんだよ」
千円くらいやっても良いけど使い道な。
何を買うのか知らねぇけど、……って、ホントに何を買うんだよ。
菓子じゃねぇよなぁ……?
菓子なら金がなくっても、俺か茉春に ”買って!” と言えば済む話。
たぬきは何を買いたいのか、考えても浮かばねぇから聞いてみたんだ。
するとたぬきちは、
『千円もらったら茉春にプレゼントを買うんだ! どんぐりはあげたけど、他にも色々あげたいからな! でも……オレは狸でユーレーだから金なんて持ってない。それで弥春から巻き上げようと思ったんだ!』
こう答え、ブリッジするほど胸を張る。
「へぇ、茉春にプレゼントねぇ。ま、そういうコトなら文句はねぇわ。でもよ、惚れた女にプレゼントだろ? その為の金を俺から巻き上げるってどーなんだよ。茉春が知ったら受け取らねぇかもな。あ、ちなみに何を買おうとしたんだ?」
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