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「あー! まただ……」
私が悲壮な声を上げると、ネクタイを締めながら亮君が覗き込んでくる。
「大丈夫。大丈夫。食っちゃえば同じだから」
亮君はそう言っておおらかに笑う。
でも私は知っているんだ。
亮君は黄身がプルプルの半熟卵が好きな事を。
フライパンの中では、破れ出た卵の黄身が、あっという間に白っぽくなっていった。
「うん。美味い、美味い」
焼き過ぎた目玉焼きはフォークでは上手く切れなくて、亮君はクルクルっと巻いてフォークで突き刺すと、ウインナーみたいにかぶりついている。
ハッキリ言って私は料理が絶望的に下手だ。
亮君と結婚して3ヵ月。
色々なレシピを調べたり、時間をかけて作ったりしてみたけれど、なかなか料理の腕は上達しない。
それでも亮君は「美味い、美味い」と言って残さず食べてくれる。
私はそんな優しい亮君が大好きだけど、その笑顔を見る度に、申し訳なさでいっぱいになるのだ。
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