毎朝私はあなたのために卵を焼く

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「おー、スゲー」  白い陶器のお皿をテーブルの上にコトリと置くと、亮君は感嘆の声を上げた。  初めて作ったオムレツは案の定グチャグチャになってしまったけれど、ユメさん流誤魔化し術、ラップにくるんでキャンディみたいにきゅっとやるだけで、なんとなく形になる。  卵は中まで火が通ってしまっているし、ちょっと焦げているけれど、形が綺麗なだけで美味しそうに見えるから不思議だ。  ユメさんの写真を真似て買ってきた真っ白いランチプレートに載せ、レタスに赤と黄色のパプリカスライスを添えるだけで、私でも可愛い朝食を作る事ができた。  もちろん亮君のオムレツに、ケチャップでハートマークをつけるのは忘れない。  何だか凄く嬉しい。  亮君が喜んでくれる姿を見るだけで幸せだった。  オムレツを頬張る亮君が発するセリフが、失敗した目玉焼きを食べている時と同じ「うん。美味い、美味い」でも本当に嬉しかった。
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