毎朝私はあなたのために卵を焼く

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『薄切り肉が安かったから大量買い! 晩御飯用とお弁当用に分けて冷凍しておくと便利だよ』  ユメさんのブログを見る度に、私はなるほどと唸る。 『献立決めるの面倒だから、曜日ごとにある程度メニューを決めちゃってる。日曜煮込み料理、月曜ひき肉料理……って感じに。予定がズレたら土曜の予備日で調整。一週間ちゃんとできたら自分へのご褒美で土曜はお惣菜や外食だよ』  それは便利。そのままユメさんの真似をしちゃおう。 『今日は休みだから餃子、大量に作った! 冷凍しておけば、あとは焼くだけだから時間がない時に便利! 微妙な量残っても、揚げ餃子とかスープ餃子とかにできるよ』  焼くだけだったら、平日の忙しい時の晩御飯にちょうど良い。  でも餃子なんて作った事ないよ。どうしよう……。  ユメさんのブログには、ちょっとしたコツだとか時短メニューのレシピなどは載っているけれど、基本メニューのレシピまでは載っていない。  私は意を決してユメさんにコメントを送ってみた。  すると返信と共に、翌日のブログには餃子のレシピが載っていた。 『ありがとうございます。頑張ります!』 とコメントを入れたら、 『頑張り過ぎないで。ゆるゆるで良いんだから』 と返信があった。  ユメさん神かも。  次の週末は、亮君に手伝って貰いながらお肉とか餃子の材料だとかを買いに行った。  ユメさんの言っていたとおり、お肉は小分けにして冷凍しておいた。  お弁当用にと思って買ってきても、中途半端に余らせて結局捨ててしまう時があるし、レシピ通りに作ろうと思っても、ちょうどピッタリの量のお肉なんてなかなか売っていない。  私は自分流のさじ加減なんてまだわからないから、レシピ表とちょっとでも違うと混乱してしまうし、結局失敗してしまったりするのだ。  小分けにしておけば本当に便利だ。  そのあとは、ユメさんのレシピを見ながら餃子を作った。  皮にヒダを寄せながら包むのは意外と難しい。  真剣にやっていたら、いつのまにかレースのカーテンからオレンジ色の光が差し込んでいた。  大変だ、洗濯物を片付けて、今日の晩御飯の支度をしなくっちゃ。 「ごめんね、亮君。今から大急ぎで晩御飯作るから」 「うん。大丈夫、大丈夫」  いつものように寛容な返事をしてくれた亮君だったけれど、その黒い瞳は何か言いたげに曇っているように見えた。
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