3/6
21人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
 死刑囚達は「花の館」という建物に駆け込んだ。  エントランスは広く大きな花壇があったが、誰も手入れをしなくなって何年も経っている。荒れた畑のようだ。  壁を彩る花々の絵がどこか寂しく感じられる。  奥へ行くか、それとも別の出入り口を探すか、死刑囚達はキョロキョロとした。  すると……。  「あら、ここに来ちゃったんだ?」  どこか幼げな女性の声が響いた。  全員の視線が声の主の方を向く。  鮮やかな色の琉装を身につけた、小柄な女性が立っていた。よく見ると、まだ若い。おそらく龍一よりも年下だろう。  「私はティナ。よろしくね。……って言っても、みんな殺しちゃうんだけどね」  「くそっ!」と一人が憎々しげな声を漏らす。「この小娘を捕まえて、人質にしちまおうじゃねえか。拷問して何やってるのか説明させるのもいい」  男が言うと、横のヤツも「よし」と頷く。凶悪犯らしい発想だ。  「え~? いやぁっ!」  はしゃぐような声をあげると、ティナは走って逃げ始めた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!