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死刑囚達は「花の館」という建物に駆け込んだ。
エントランスは広く大きな花壇があったが、誰も手入れをしなくなって何年も経っている。荒れた畑のようだ。
壁を彩る花々の絵がどこか寂しく感じられる。
奥へ行くか、それとも別の出入り口を探すか、死刑囚達はキョロキョロとした。
すると……。
「あら、ここに来ちゃったんだ?」
どこか幼げな女性の声が響いた。
全員の視線が声の主の方を向く。
鮮やかな色の琉装を身につけた、小柄な女性が立っていた。よく見ると、まだ若い。おそらく龍一よりも年下だろう。
「私はティナ。よろしくね。……って言っても、みんな殺しちゃうんだけどね」
「くそっ!」と一人が憎々しげな声を漏らす。「この小娘を捕まえて、人質にしちまおうじゃねえか。拷問して何やってるのか説明させるのもいい」
男が言うと、横のヤツも「よし」と頷く。凶悪犯らしい発想だ。
「え~? いやぁっ!」
はしゃぐような声をあげると、ティナは走って逃げ始めた。
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