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春の国、セーラー服少女と、白い犬
【春】
サラサラと春風で黒い長い髪が、なびいている。可憐な少女が一人。花畑で静かに佇んでいる。そして、その少女の後方には、白い犬が座っている。
少女は、セーラー服を着ていて、右手には、長い刃物を握っている
「不知火(シラヌイ)…。お願い。」
少女は、言った。
どこか、儚げだが、その声からは、しっかりとした、凛とした芯のある声が響く。
左手の、人差し指と、中指を二本立てて、『印』を結ぶ。
不知火と呼ばれた犬は、「ワォン!」と、少女に答えるように返事をする。
すると、不思議な事に、少女の持つ刀は燃えて、ボォッと、炎を纏う。
目の前には、黒いドロドロしたヘドロ沼のような、大きな塊が…。
塊から、二つの赤い目玉が、ギョロリと。
「ヌォオオオオオオオオ!!」
ドロドロとした、黒い大きな塊は、少女を威嚇するように叫んだ。
「行くよ!」
少女が、ソレと同時に走りだし、花畑の花の中を走り抜けて行く。
少女が走り、花びらがフワリと舞い散る。
少女の後方を、不知火が、ついて走る。
「ワン!」
少女は、ジャンプして、その黒い沼みたいな塊をナナメにズバッと一刀両断した。
「グォオオオォォォ………。」
黒い塊は悲鳴を上げて、爆散して、ビチョビチョと飛び散り、頭上から雨のように、降り注いだ。
ヒラリ、ヒラリと、花びらが地面に落ちる。
「……。コレで、23体目。………。この町は、死んでいる…………。」
少女は、悲しみを込めて言った。
刀を、ピッと振り払い、黒いドロドロを吹き飛ばす。
そして、鞘に刀を納め、少女は言った。
「行こうか…。」
少女は歩き出して、不知火は頭を少し下げ、少女の後に続いた。
* * *
白い四角い箱のような家々が立ち並ぶ。
だが、人の気配はほとんどなく、この町はゴーストタウンと呼ばれていた。
その内の一本の道を少女と、白い犬の不知火は、歩いていた。
そして、少女は、四角い白い建物の一つに立ち寄る。
四角い建物の、入り口には、電光看板に、
『GUILD 《ギルド》』と、書かれていて、ピカピカ点滅していた。
そこの、カウンターには、水色の肌をした、人型の一つ目の宇宙人がいた。
宇宙人は、痩せていてヒョロい。ピッチリとした青色のゴムスーツを着ていた。
黄緑色をした瞳が、少女を見る。
少女が、その宇宙人に話しかける。
「『YOUKAI(妖怪)』を倒したわ。チップを、頂戴。」
「困りますよ…、サラさん。『YOUKAI』を倒す時は、ちゃんとギルドに依頼してからじゃないと…。」
一つ目の宇宙人が言う。
ムッと、した顔で、サラと呼ばれた少女は、
「五月蝿いわね…。今度から、そうするわよ。」
と、言い放つ。
「ホントは、正式な依頼書を出してからじゃないと。」
そして、宇宙人は、銅貨をカウンターのテーブルの上に、チャリン、チャリンと落とす。
銅貨の数を、数えるサラ。
「ひー、ふー、みー、……十五枚ね。……ちょっと、少ないんじゃない?」
そう言う、サラ。
(銅貨1枚で100円の価値を持つ。)
「そ、そ、んな事ありませんよ。」
宇宙人は慌てて言う。
「まぁ、いいわ。」
そう、サラが言って、14枚の銅貨は、胸ポケットに入れ、その内の1枚をカウンターに、置く。
「喉が渇いたわ。」
サラが言った。
「かしこまりました。『1番』から『20番』まで、ありますが、どれにいたしましょう?」
宇宙人が言った。
「じゃあ、『12番』」
サラが言う。
「ドウゾ。」
宇宙人は、『12』と書かれた、ストローがさされた、プラスチックのジュースをサラに渡す。
ちゅー…っと飲むと、
「オレンジジュースだわ…。本当は、ストロベリージュースが、良かったのに。」
そう、サラは文句を言った。
「仕方ありません。ジュースは、ランダムですから。」
宇宙人はそっけなく言った。
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