余計なお世話

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  「そんなご心配いただかなくても」 「いえ! 聞いたらウチの人が原因だって言うじゃないですか! しかもこんなに小さい子どもがいるっていうのにお母さんもいなくて……もう可哀そうで可哀そうで……」  ハンカチを目に当てて泣き出したから堪らない。セナもバカバカしくてなんと言っていいか分からず。 「僕、可哀そうなんかじゃないです!」  祐斗が叫んだ。 「失礼です、そんなこと言うなんて! 僕には父さんがいるんだから」 「そのお父さんがこうなってしまって……日常生活にも支障をきたすでしょう? 良くなるまで是非お世話させてくださいな」 「良くなるまでって」  さすがにセナも言葉を失う。  祐斗は黙ってリビングを出た。急ぎ足で自分の部屋に行く。鍵をかけて携帯を手にした。相手が出るのをいらいらと待つ。 「あ、しぃちゃん? あのね、すぐに来てもらえる?」 『どうしたっていうの? 今日日曜日よ』 「分かってるよ、そんなこと。今徳野さんが来てて」 『徳野さんって昨日の人?』 「うん。奥さんと来てるんだ。それでね、お父さんが治るまでずっと家の手伝いに来るって。僕が可哀そうなんだって」  最後の方には怒りが混じっている。その怒りは雫に伝染したらしい。 『なに勝手なこと言ってんのよ! いいわ、私が行く。追っ払ってあげるから待ってなさい』 「ありがとう!」 『いいのよ。あんたも苦労するわね』  これで強力な助っ人が出来た。祐斗はリビングに戻った。  リビングではセナが攻防を繰り広げていた。 「だって僕が可哀そうじゃないですか! 唯一のお父さんが腕が使えなくなって……お夕飯だって洗濯物だってどうするんです?」 「どうするもこうするも、俺がいるし祐斗だって手伝えるし」 「子どもは遊ぶのが仕事ですよ。そんな、年端も行かない子に家のことをやらせるだなんて」  まるで極悪人の父親のような言われ方に、祐斗の方がカチンと来た。 「僕たち、家族で助け合ってるんです、人に手伝ってもらわなくたって生活できます!」 「まぁ、健気な……お父さんが良くなるまでおばちゃんの家にいてもいいのよ」  またハンカチが出て来る。開いた口が塞がらない。 「誰の家にも行きません!」  そうこうしている内にチャイムが鳴った。今日は雫は朝比奈の家にいた。だからあっという間の到着だ。しかも秀太朗も一緒に来た。 「こんにちは! 日曜にごめんね、セナの加減が悪いから手伝いに来たわ」 「雫!」  救いの神の有難い言葉にセナが思わず立ち上がる。 「どちら様?」  とは、徳野夫人の言葉。どうやら本気で瀬名家を牛耳るつもりらしい。 「そちらこそどなた様?」  こういう時の雫は強い……いや、普段から強いのが雫だ。  秀太朗が手を祐斗の肩に置いたまま先に答えた。 「瀬名くんとは長い付き合いでしてね。朝比奈と申します。祐斗が生まれた時からの付き合いですよ」  徳野夫人からしたら、強敵現るだ。  
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