余計なお世話

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  「お手伝いなさる方がいるなら安心ですけど……でも日曜だけでしょう? 私は平日も空いていますし、学校から帰ってからのお世話も出来るし。日中にしても瀬名さんお一人じゃ困るでしょう!」  雫がにこやかに答える。 「夕方から私の家に連れて行きますのでご心配なく。治るまでは私と一緒にいますから。瀬名さんたちの好みならよく存じていますので」  それはセナには寝耳に水だ。『治るまで一緒に』という言葉に思わず声を出そうとして、雫の目配せに気づいた。 (すまん、厄介かけるな) そう心の中で謝罪する。けれどここは甘えた方がいい。 「そうなんです。俺に何かあれば朝比奈さんのところに世話になるので。祐斗もすっかりこちらの家に馴染んでますし」  奥さんの方はどう見ても不服があるようだが、ご主人の方は納得したらしい。 「すみません、良かれと思って来ただけで。良かったです、瀬名さんが大変な思いするんじゃなくって」 「ウチにも甘えてくださいね。なにかあれば遠慮せず。祐斗くん、このお家で困ったらおばちゃん、いつでも手を貸すからね。困ったことがあったら言ってね」  それにも返事せずにいると秀太朗が祐斗をつついた。 「祐斗、お返事しなさい」 「……はい。ありがとう」  このやり取りだけでも朝比奈家とどれだけの繋がりがあるか分かるはずだ。 「いいのよ、私には甘えてくれれば。おばちゃんはね、ご用なんか言いつけないから」  さすがにご主人も言い過ぎだと思ったらしい。奥さんを促して玄関の方に向かった。 「じゃ、失礼します。明日の通院は」 「私が同行しますので」  雫がピシャンという。 「分かりました。どうぞよろしくお願いします」  こうして徳野夫妻は帰って行った。誰からともなくため息が出る。 「コーヒー入れて来るね! 祐斗、手伝って」 「うん」  雫と祐斗は台所に行った。 「災難だったね、今回はいろいろと」  秀太朗は笑っている。 「参ったよ、本当に。落ちたのもそうだし病院に行く羽目になったのも、徳野さん夫婦にも」 「気をつけてくれとしか言えんが。まぁ、今回は事故だから」  喋っていると雫と祐斗がコーヒーを持ってきた。 「今日は父さんのとこに泊まるでしょ?」 「いや、それは悪いよ」 「また見に来るかもよ」 「まさかぁ」 「いや、気をつけた方がいい。な、祐斗。おじちゃんのところにお泊りでもいいだろ?」 「うん、行く! これ以上変なこと起きて欲しくないから」 「というわけで、お泊りの支度してね、セナ」  まったくとんだしわ寄せだ。祐斗は泊ったことがあってもセナは朝比奈家に泊ったことが無い。 (本が読めるからいいか) そう思うことにした。  
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