やる気

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   (かまど)は古い村落の物らしく、レンガを積み上げた大きな丸い物だった。そこに熱効率を考えたアレンジを加えていく。それとは別に石窯(いしがま)を作り、小麦粉をこね自分たちでパンやスパゲティやパイを作る。大の男が4人もいるのだ、死んでいた屋敷がどんどん生き返っていく。  思ったより広い屋敷だから、中央には大きな囲炉裏端(いろりばた)を作った。もちろんこれがあっという間に出来上がったのは、寒がりのセナのお陰だ。初雪が降る前にと、セナは必死に作った。赤々と火が立ち上る屋敷の中を見てセナは大満足した。 「父さん、コーヒー入ったよ」  新しい家に来ても、コーヒーは祐斗の担当だ。第一、セナがそれ以外飲まない。 「祐斗、それ以上我がままに育てるな!」  シバの言葉にタツキとアキラが笑う。  それぞれの段取りが出来ていく。買い出しはアキラがメインだ。あちこちの村落に顔を出し、時には顔も体格も変えて食料を調達してくる。タツキと祐斗は狩りと薪作りだ。すでに雪は降り出していた。祐斗は弓の扱いを習ったが、いざ動物を標的にすると尻込みをしてしまう。 「狩りは儂と行こう」  シバが祐斗を連れ出した。狙いは罠を使ったウサギなどの小動物だ。罠を作るのは面白かった。だがその罠に捉まったウサギにナイフを入れるのを祐斗は嫌がった。 「どうする、ここに放置して行くか? このウサギはなんのために死んだんだろうな。何の役にも立たず、ただ氷の中で凍っていく。それが運命だったとしたらつまらん一生だったろうのう」 「僕らが食べるのはいいって言うの!?」 「食べもせず罠をかけて殺していくのは子どもの遊びだろうが。お前はどうしたいんじゃ? 穀物と野菜だけを食べて生活をしていくのか。今までお前が食ってきた肉や魚は誰がどうやって手に入れてきたと思っている? 誰かが殺すんじゃよ。そしてそれを加工する。美味くなった食事がお前の喉を通って腹に入る。違うのか?」  祐斗には意味はよく分かっていた。けれど殺す場面に出会うのは嫌なのだ。皮を剝ぎ、内臓を取り出し、肉を切り分けていく…… そこにどうしようもなくおぞましさを感じてしまう。 「ならそのウサギ、そこに腐らせておけ。腐るためだけにお前が殺した獲物じゃ」  シバは祐斗を置き去りにした。そう遠くではない。一人でも帰ってこれるだろう。 「祐斗は?」 「罠にかかったウサギを殺せんというから置いてきた」 「そんなっ、あの子はまだ子どもなんだぞ!」 「子どもなら肉は食わんのか? それとも一人、町にでも帰すか?」 「くそじじぃっ」  セナは上着も着ずに外に飛び出した。シバの顔には笑みが零れていた。
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