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「この三年間、どこに行ってたの?」
「内緒」
「祐斗の学校とかは?」
「内緒」
何を聞いても「内緒」で片づけるセナを雫は蹴り飛ばした。
「なんだよ、痛ぇな。まだ足癖悪いのか?」
「どうせたいして痛くないくせに」
「それ、人間の偏見。俺たちだって痛いもんは痛いの」
台所からのくだらないあーだこーだを聞いていると、祐斗は(我が家に帰ったんだぁ)と笑みが零れて来る。
それでもあの小屋にも情は移っていた。
久しぶりの自分のベッドはいい。ころころと転がっている内に祐斗はぐっすり眠ってしまった。
ふっと目が覚める。きらめくナイフを取り押さえて「タツキぃ、今日くらいいいでしょ」と文句を言う。
「その『今日くらい』が甘いんだ。俺がもうちょっと静かに入っていればお前、殺られてたぞ」
最近はこんな修行までやらされている。毎夜じゃない。それじゃ修行にならない。いつ来るか分からないからいいのだ、と変な理屈をつけられている。
「今日はもう来ないでね! 絶対もう起きないから!」
「さぁな」
タツキは枕を投げつけられる前に出て行った。
鍵をかけたって何の意味もないことくらい知っている。心配するだけ損だから、祐斗はまた眠ってしまった。
結局その晩は、今度はアキラがしのび込んできて腕に噛みついてやった。
「人間は寝ないと死んじゃうんだからね!」
「そうあっさりとは死なないさ」
アキラはにたっと笑って出て行った。
入れ替わりにセナが入ってきた。
「今度はお父さん?」
「見張っててやる。だからぐっすり眠っていい」
これで安心して眠ることが出来た。
その後に入ってきたシバはセナに追い返された。
「甘やかしていると碌なことにならんぞ」
そう言われつつも。
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