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三年近く経って記憶がよみがえったのは朝比奈家ばかりじゃない。サイファもだ。サイファからはすぐにシバに連絡が入った。
「で、アンジェリッタは投獄されたんだな?」
『ええ。でも祐斗を狙っているのは彼女ばかりとは限りませんよ』
「研究はどうなった?」
『弛緩剤対抗薬はほぼ出来上がってます』
「ということは表立った研究は終わりか」
『はい。いよいよ本命ですね』
実は二人には気にかかっていることがある。それについての研究を始めるつもりなのだ。
「アルフレッドにはいつ話す?」
『それって僕だけで話を進めるんですか? ずるいですよ、そんなの』
サイファは笑っている。
「儂は死んでいる」
『そう思われてただけでしょう。いいじゃないですか、帰ってきたって』
いつもなら息子に言い負かされるようなシバじゃないが、確かにこの件に関してはサイファ一人の身には余る話かもしれない。不承不承、シバは中国に経つことにした。
「となるとこっちの防備が心配になる」
『例の小屋に。あそこが一番安全です』
「そうだな」
厄介なのは、今回の研究に関してはセナと祐斗に知られるわけには行かないということだ。
『いったんそっちに戻ります。必要なこともあるし』
「ヤツらも喜ぶじゃろう」
『余計なこと、言わないでくださいよ』
「ふん、儂を誰じゃと思うとる」
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