最後のアガキでみる夢は

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どうしたものかと途方に暮れているとISO認証機関から連絡が入った。 事情を説明すると「当社で働きませんか」と誘われる。 二三日考える時間を頂いて、お断りをした。 何かの誰かの所有物である限り、自分の意思や意志と関係なく捨てられる事は否めない。 特に女性は経済的な自立と精神的な自律の両方が完成しなければ何かの誰かの所有物から逃れる事ができないと思う。 だから、同じことが何度も繰り返される。 ならば自分で自分自身を所有すればいいのではないか。 これが私の最後のアガキで出した結論。 私は仕組を構築するコンサル会社を立ち上げた。 最初の3年は認証機関から外注業務を請け負った。 とにかく売上を計上する事が先決だったから就労時間等関係ない。 後ろ盾もない、生活を支えてくれる人もいない、頼れるのは自分だけだ。 それでも私は私を所有している。私の時間は初めて原色の強い赤色を帯びていた。 4年目を過ぎた頃から思い描いていた仕組を構築する仕事の受契が増えていく。 依頼して下さったのは弟の仕事を手伝っていた時に関わった女性経営者の方々だった。 新プロジェクトを立ち上げる、事業部再編をする等、今ある組織体を変える為の業務プロセスの見直し、再構築の依頼だった。 再構築後の社内定着までを依頼されるから継続的な受契に繋がる。 5年目を迎えてやっと会社と呼べる売上を計上できるまでになった。 最期のアガキが実を結んだと実感した瞬間だった。 そして、私に初めて仲間と友人ができた。 私の周りを覆っていた薄い膜はいつしかなくなり、外の世界と直接繋がっていると感じられたのはこの頃からだった。
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