最後のアガキでみる夢は

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肌寒さを感じて目が覚めたのはダイニングテーブルの足元だった。 テーブルの上に置かれていた物、夫に引きちぎられた私の衣服が散乱している。 激しい頭痛に襲われながら私が最初に思った事は「まだ、生きている」だった。 起き上がろうと身体を右へ傾けるとわき腹に激痛が走り、触れると肋骨が変形していた。 夫の姿はなかった。 テーブルに手を伸ばそうとして、左腕に力が入らない事に気付く。 左肩が脱臼している様だ。 子どもの頃に身につけた護身術の賜物だ。 あれだけ、テーブルや床に叩きつけられ、無理な体勢を取らされてもこの程度の負傷で済んでいるのは無意識に受け身の体勢を取っていたからだろう。 私はゆっくり立ち上がり、全裸のままロープを左腕に巻き付けた。 柱に片方を括り付け、タオルを噛みしめる。 一気に全体重を右に掛けた。ガコンッと鈍い音が首に響く。 折檻部屋で折檻を受けると決まって、肩が脱臼した。 久しぶりに味わう痛み。これ位なら我慢も対処もなれたものだ。 全身に力が入ったからか内腿に生暖かいものが伝った。 血液が少し混ざっている。擦過傷を起こしているのだろう。 問題は変形した肋骨だ。傾き加減が悪いと内臓に刺さる可能性がある。 こんな状況にあっても冷静に身体の状態を確認する自分自身に口元が歪む。 私はよろよろとシャワールームへ向かった。
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