最後のアガキでみる夢は

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骨折はしていたものの幸い手術の必要もなかった。 厄介だったのは骨折となった原因の説明。 アメリカはDVに対する病院からの通報が義務付けられているから説明には細心の注意を払った。 これ以上、夫の立場を悪くすれば恐らく彼は立ち直れない。 護身術の習練中の怪我だと最もらしい口実は、顔や腹部に打撲痕がないことですんなり受け入れられた。 その日以来夫は、私の顔を見ようともしない。 罪悪感を覚えているのか、私がマリオネットとしての価値を失ったのか。 それでも、夫は家に籠る生活を改める事はなかった。 2か月程経った頃、久しぶりに上機嫌の夫が私の帰宅を待っていた。 どうやら昔の知人から融資を受けられる事になったらしい。リッツカールトンで会うことになったから私にも同席して欲しいと言うのだ。 私は淡々と夫の話に相槌を打つに留めた。 当日、出がけに久しぶりの外出だから一件寄りたい所があるから先に向かう様に言われ、私は一人リッツカールトンへ向かった。 ロビーで夫を待っているとメールが入った。 (既に知人の部屋に入ったから早々に来るように) どこで行き違いになったのかと思いつつも、 知人が滞在するペントハウスに案内された。 通された部屋には知人のみで夫の姿が見当たらない。私の頭を嫌な予感が走る。 無言で佇んでいるとソファを勧められた。 夫の到着が遅れているようならロビーで待つと言い残し部屋を去ろうとすると引き留められた。 融資をするには担保が必要だ。しかし、今の夫に担保となる資産は残っていない。 ならば一番大切にしている所有物(・・・)が他人の手に渡る所を見ていられるのならば融資を考えてもいい。 「あなたの夫は隣の部屋でショーが始まるのを待っているよ」と言われた。 私は夫の所有物として他人に譲渡されたのだ。
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