平穏な生活

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授業が終わり中休み。 トイレに行って教室戻れば人だかりが出来てて。 「えっ…何で先輩がいんの?」 「誰か探してるらしいよ…」 「…やっぱ…かっけぇ」 そんな声が聞こえる。 次の授業の準備もあるし群れてる入り口を掻き分けて教室に入れば何だか言い合いしてる声。 「俺が拾ったんですって!」 「嘘つくなよ。史也の嘘…バレバレだから」 「だから!嘘じゃないって」 近づけば史也と言い合いしてる声。 人集りの隙間から覗けば、俺の席に誰か座ってる。 みんな背が高いからよく顔は見えないけど。 「ごめん。ちょっと退いて」 人の波を掻き分けてやっと見えた先には… 「えっ…」 俺の席に座ってたのはこの学校で有名な先輩。 「正直に言えよ。“コレ”拾ってくれたの誰?」 史也の前にチラチラ振りかざしてるのは学生証。 「あっ、それ」 俺が声を出せば、史也と先輩は俺を見るわけで… 「あっ…新」 史也は俺を見ながら頭を抱えてて… 先輩は俺を見るなり顔を赤くして立ち上がった。 「あ、新君が拾ってくれたの!?」 「えっ、あっ、はい」 って…なんで俺の名前…? 「マジか!ありがとう」 そう言って…気づくと抱き締められてた。 「えっ、あっ、ちょっ…」 ぎゅうぎゅう抱き締められて痛い。 抱き締められてる俺を見て…「うわぁ!」とか「いいなぁ」とか言われてるけど… 俺はそれどころじゃなくて。 「は、離して、下さい」 バタバタ踠いてもビクともしない。 それに気づいた史也が先輩の腕を掴んで引き離してくれた。 「もう、いいでしょ、先輩」 「せっかく良いとこだったのに!ごめんね。新君。邪魔されちゃった」 「あっ、やっ、っと…」 俺と先輩の前に史也が立っていて。 「もうすぐ授業始まりますよ。先輩」 「分かってるよ。すぐ戻るから、そこどけ」 「嫌です」 「ったく。もう何もしねぇよ。ちゃんとお礼言うだけだからそこどいて」 それでも史也は俺の前に立ったまま。 「史也?もう、大丈夫だから」 史也の背中を叩けば、俺のほうを振り向き嫌そうな顔。 史也の体を少しずらして先輩の前に出た。
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