平穏な生活

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俺が前に出れば、また顔を赤くしてる先輩。 「俺、須永 柚月(すなが ゆづ)。3年」 「…知ってます。有名だから」 「あっ…マジ。ヤバッ…うれし」 先輩は顔を赤くしたまま、口元抑えてにやけてる。 「俺は…」 「湯川 新君でしょ?知ってる。君も有名だから。 これ、ありがとう」 先輩は手帳を俺に見せて、胸ポケットにしまった。 「いえ。俺が持っていかなくてすみません」 自分が持って行かなかったことを頭下げて謝れば。 「仕方ないよ。"こいつ"がいる限り君に近づけなかったしね」 先輩は史也を指さして笑ってる。 史也を見れば不貞腐れて俺から顔を背けた。 「やっと話せてうれしいよ。じゃあ俺戻るね。またね。新君」 先輩は俺の頭を優しく撫でて教室を出て行った。 先輩が歩いたところは道が出来てて。 皆先輩の背中を見送っていた。 撫でられた頭にはなぜか史也の手が乗ってて。 その顔はなんだかさみしそう…? 「…もっと早く手を打たないからこうなるんでしょ?馬鹿だな」 気づけば智が隣に立って史也を突っついていた。 何を言ってるかわからないけど、史也は智の手を叩き落として。 「うるせぇよ」 「何の話?」 二人の話が分からず聞いても… 「新は気にすんな」 ごまかされるだけ。 「ん?新がにぶチンって話」 智は呆れた顔して俺の事見てる。 ん…俺が鈍いってこと? 「俺…鈍いの?」 俺の言葉に驚いた顔してため息ついてる二人。 他のクラスの奴も初めは驚いてたけど、気づけばみんな笑ってる。 智も呆れて笑い出した。 「新はそのままでいてよ」 智は笑いながら俺の肩をポンと叩いて席へと戻った。 よくわからなくて席につきながら史也に尋ねても。 「史也?どうゆうこと?」 「智の言ったこと気にすんな。ほら、授業始まる」 いつもの笑顔で史也も席につき、俺の頭を撫でて前を向いた。
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