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誰かが突然いなくなることは、ここでは日常的なことだった。
だから誰も驚かない。
「良いなぁ、メリッサ…
でも、なんでメリッサが…
あの子より私の方がここは長いのに…」
「別に長さで決まるわけじゃないじゃないか…」
「だけど、あの子はきっともっとずっと長い間ここにいるって思ってたんだもん。
皆だってそう言ってるわ!」
「そう……」
僕は、花を見るふりをして、花壇の傍に身をかがめた。
「……あんたって、本当に愛想がないわね。
……あ…!ベルーー!
メリッサのこと、知ってるー?」
ちょうどその時ロザリーは友達をみつけたようで、手を振りながらその子の方に駆け出して行った。
(良かった……)
僕は、ロザリーがいなくなったことで、ほっと胸を撫で下ろし、いつもよりちょっと早めに森の方へ向かった。
またロザリーに話しかけられたらいやだったから。
まぁ、別の話し相手が来たんだから、僕には構わないかもしれないけど…
(やっぱり良いな…)
森の中は、広場よりもさらに静かでとても落ちついた気分になれる。
静か過ぎて、あんまり好きじゃないっていう人もいるくらいなんだ。
でも、耳を澄ませばこの森の中にはいろんな音が存在してる。
小鳥の羽ばたき、木の葉の擦れる音や、風の音、遠くを流れる水の音、そして僕の足音…
ここにあるのは耳障りではないしなやかな音ばかりだ。
僕は、そういう音に囲まれていると、心から安心出来る。
(こんな良い所は他にはないよ。
僕は、ずっとずっとここにいたい…)
お気に入りの木の根元にもたれて、僕はじっと耳を澄ませた。
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