最後の○○

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最後の○○

 周りを見渡せば、同期の姿はなくなっていた。  残っているのは、もう俺だけだ。    長時間労働は当たり前、完全な休日なんてこれまであっただろうか。  いや、記憶にない。  正直言ってブラックな環境。    そのうえ、若手の台頭、突き上げによって、長年仕えて来た俺たちは、もう用無しとばかりに容赦なく切り捨てられる。  日々を共にした同期たちは、次々と力尽き、上へ下へと飛ばされてしまった。中には、話した事も、顔を合わせた事もないヤツらもいたのだが、しかし、同じ釜の飯を食べた仲間、戦友だ。別れの度に寂寥感に苛まれてきた。  日の目を見る事の少ない縁の下の力持ち。ただただ黙々とその役割を果たしてきた、そんな存在の俺。  そんな俺が、汚職だと?  青天の霹靂、寝耳に水、ありえない。  そりゃ、汚れ仕事には散々手を染めてきたが、それは必要な仕事だと信じていたからだ。  汚職などと言われるとは、心外過ぎる。  待て、待ってくれ! とにかく、俺の話を聞いてくれ!  やめろっ! 待て! うわあああああぁぁぁぁ――  ……。 「は~い、よく我慢したねぇ。虫歯の治療、完了だよ」 「ほんとに、偉かったわよ、タクちゃん!」 「コレ、最後の乳歯だったね。持って帰る?……そう、じゃあコチラで処分しておきますね!」
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