11人が本棚に入れています
本棚に追加
「すっごいじゃーん、聞きほれちゃった」
「すごいだろ。湊音もだけど俺らの演奏も」
「……そうね。美帆子はどうだった?」
演奏が終わったあと力がガクッと抜けてしまったがなんとか立ち続けている。恥ずかしくて美帆子先生たちを見ることが出来なかったけどいつものように歌ったつもりだったが美帆子先生の顔をふと見たらすごく微笑んでいて喜んでくれたんだと。
恥ずかしい。あぁ、恥ずかしい。
倫典やメンバーたちは三葉先生とワイワイするが美帆子先生は楽器を一人眺めている。
今がチャンスなのか? 倫典が僕を見てウインクした。僕は美帆子先生のところに行く。
「美帆子先生も楽器弾かれるのですか」
ってなんつう質問してるんだ、僕。でも美帆子先生は微笑んで首を横に振った。
「できないからこそ軽音楽部のみんなすごいなぁって思ってるわ。湊音くんも」
湊音くんも、って下の名前に君付けってのも恥ずかしい。
「そんなことないですよ」
「じょうずだよ。もったいないけど秘密にしてもいいと思う」
「なんで」
「できるってアピールするのも全然いいけど出来るけどそうでもない。内に秘めているのも悪くはないけど……湊音君の唄声好きだよ。かっこいい」
好きにかっこいいと来ましたか。あぁ、心臓が高鳴るのが分かる。涼しいのに体が熱くなる。褒められるなんてこしょぐったい。どうすりゃいいんだ。場が持たない。
「主任から聞いたけど私のことを探しに来てくれたって」
うわ、ばれていたのか。
「いや、その……僕はしっかり授業聞いてたし」
「しってる。私のことをずっと見ていた」
「あ、その……」
「ふふふ、わかりやすい。あなたって」
美帆子先生……。
「また聞かせてね」
「は、はい」
すると彼女がスッと僕の右手に何か紙切れを渡した。
「一人のときに読んで」
「はぁ」
美帆子先生は三葉先生のもとに行き、二人は部室から去るとほんのり男臭かった中にいいにおいが残ってて三葉先生と話していた部員たちは浮かれていた。
「美帆子先生と楽しそうに話してたじゃん」
倫典、見てたのかよ。
「別に」
「まだ一週間はある。チャンスを狙え」
「どうやって」
「俺も助けるからさ」
「倫典は三葉先生が」
「俺は大丈夫だから。俺と職員室行った時に美帆子先生も巻き込んで枚に津話ししようぜ。なんなら昼ご飯四人で食べるとかさ」
「そ、そそんなのぉ」
「無理じゃないって」
無理だ、無理だと思いながらも美帆子先生からもらった紙切れの中身をこっそりトイレの中で見た。
彼女の電話番号とパソコンのメールアドレスが書かれていた。用意していたのか? そして僕は小さくガッツポーズをした。
最初のコメントを投稿しよう!