美帆子 第一話

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美帆子 第一話

目を覚ます。明日から教育実習が始まるというのに、気分は上がらず、どこか鬱々としている。 今日は実習先の高校にて顔合わせと夜は食事会らしい。 実習先は廃校になった母校の隣の高校で、少し不安になっていた。自分が通っていたのは女子校だったため、同年代の男性との交流はほとんどなかった。そんな中、学園祭などで見かける男子生徒たちと交流するそこの女子生徒が羨ましく感じていたっけ。 大学生になっても、充実した日々を送れず、ただバイトと勉学に追われる日々が続いていた。 私が高校生になってから親が続けて死んでしまった。父は私が生まれる前から入退院を繰り返していて元気な姿はあまりみたことがなくて病院に常にいるイメージで最後の数年は在宅治療であったが母と祖母や親戚が変わる介護をし、父の死後は無理が祟って母は心筋梗塞で半年したら死んでしまった。 ある程度は貯金で賄えたがやはり限界で親戚に助けてもらったけどやはり足りなかった。 私が1人で生きていくならしっかり手に職を持ちなさい、と祖母の教えはずっと頭に残ってるけど……無理なものは無理だった。 私も青春を味わいたい。もっと。 恋をしたい。 青春イコール恋、単純かもしれないけど今まで必死だった私に何か刺激が欲しい。 周りの友人たちは輝いているように見えて、自分だけが何か取り残されているような気がしていた。 そんな中、教育実習で新しい環境に飛び込むことになり、ますます不安が募ってきた。自分自身がどう変わっていくのか、これからどうやって生きていけばいいのか、まだ見えていないことがたくさんある。 ……やはり一番はあの時、青春だったあの頃を無駄に過ごしたから。あんなことがあったのにもなお恋がしたいって……て、あんなの恋じゃ無い。 ふといつもつけているピアス……しばらくはつけられない。それを入れてる容器は透明なガラスの灰皿。 あの人がこの部屋にいた証。なんでまだ置いているんだろ。ピアスやネックレスを置くのにはちょうど良い……だけだ。 ああ、私の青春を無駄にしたあの人を今でも許さない。 ってなんだも忘れようとしてるのに忘れられないなんて。ほんとダメね。 とりあえず今は……教育実習を頑張らないと。恋も教師になってからでもできる、はず。 そろそろ準備しなきゃ。
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