美帆子 第一話

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3回ほど学祭の時に入ったことのあるこの高校、だが入ったのは賑やかな装飾や賑わう人々、屋台だらけの華やかな非現実な空間だった。 だから改めて入るとただの高校だ。生徒は休みでがらんとした校舎内。 「学祭で来た頃はもっと明るくて広く見えたけど案外そうじゃ無いわね」 と横で耳打ちするのは違う大学に進学した同じ高校出身の三葉だった。 高校卒業して一二回会ってたが彼女もバイトに明け暮れ会うのは2年ぶりだ。 高校の頃から高校生離れした大人の雰囲気を醸し出していた彼女はさらに色っぽくなっていた。 やはりあの噂はほんとうだったのか。夜の町で働いて学費を稼いでいたことを。 確かに二回会って二回とも迎えに来た男性は違う人だった。 校庭を見るとちらほら生徒が。あと威勢の良い声も。 「土日も部活動あるので……でも今日は部活動休みの日ですが自主練したい生徒や剣道部に関しては大会も近いので指導に熱が入ってますね」 そうか、教師になったら部活動の顧問にならなくてはいけない。 何部がいいのかしら。スポーツ部なんて嫌だし、かといって文化部……勉強系の部活動もあったわね。 「私は茶道とか花道かなぁ。美帆子は?」 来た時に渡された高校のパンフレットを見返すがこの中にはあまり興味が湧くものがなかった。 「でも三葉って、養護教員なんでしょ」 「そうだけどねー。とりあえず取れるものは取らないとさ」 「まぁ、確かにね」 久しぶりに女子トーク、楽しいものだ。 「なんなら剣道部見に行きますかねー。女性の先生たちは実習中は入らないと思うので」 学園祭でも行ったことのない場所に行くのも楽しいものだ。他の実習生も賑やかだけど知らない人の中、三葉しか知らないけど幾つになってもワクワクするものね。 古びた剣道場。 「あっ」 「美帆子どうしたの」 ストッキングが伝染してしまった。替えがない……。 「あとで替えをあげるわ」 「三葉ありがとう、助かる」 なんやかんやして剣道部の声がとても大きくさらに迫力がすごい。 「おう、若い子ばかりで」 大柄の男の人が出てきた。汗だく……。 「今年度の実習生ですよ、大島先生」 「まじか。女子大生ばかりだな。よろしくなっ」 なんか嫌だなぁ、一応男子もいるんだけど。三葉も苦笑い。他の子たちはちゃんと頭下げてるけども。 大島先生は三葉の方を見てる。やっぱり彼女は美人だし……。 「そいや俺は担任2Bだけど、そこの担当は誰?」 2B……えっと……。 「菅原美帆子さんですね、彼女です」 えっ、わたし?! あ、プリントにそう書いてある……。 隣の三葉に肩をとん、と叩かれた。嘘ぉ。大島先生を見ると少し困った顔してるの、なんなの? 「そか。よろしくな。菅原美帆子先生!」 「よろしく、お願いします」 ……微妙ー。
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