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美帆子 第二話
教育実習、生徒の前での挨拶も終えて大島先生は昨晩のことが何もなかったかのようにしている。数時間前まで私の部屋で朝ごはん食べてベランダでタバコ吸って。
昨晩のことはお酒の勢いだったのかあっさりとまた学校でなって出て行った。
私もそう引きずることもないしたった一晩のこと、そう割り切りたかった。タイプじゃないし。
したらば
「ちょっとついてきて」
なんて言われたから……次の授業まで1時間開くし準備かなってついて行った先は昨日行った剣道場。誰もいなくてがらんとしてる。いるのは私たち二人だけだ。
そしてさらに奥の部屋に通される。少し独特な匂いがする……ソファーもあって、簡易シャワーもある。
この部屋はなんだろう、と思っている暇もなく後ろから大島先生に抱きしめられた。
「大島先生……」
「昨晩のことは、遊びじゃないから」
「えっ」
ぎゅっと後ろから抱きしめられる。あんなに朝はあっさりとしていた彼だったのに。
「美帆子……」
でも待って。彼は最初三葉を見てた。昨日聞けなかった。
「……大島先生」
「二人の時は和樹、て呼んで欲しい」
「和樹……最初会った時に三葉の方見てた。飲み会だってアタックしてたじゃない」
「……まぁそうだけど……話してみたら美帆子、いいなって」
なにがいいな、よ。いいな、でセックスまでする?
「それに、俺と同じで親を早くに亡くしててなんとなく……シンパシーというかなんというか」
なんかチグハグなこと言うけどこの人、さては恋に関しては不器用だな……でもすごく抱きつく腕が強くて離れない。
「こういうことは学校ではやめて」
「早く言わないとさ、とられてしまいそうで嫌なんだよ」
「とられる?!」
「他の先生が美帆子が可愛いとか言ってたんだよ……」
そんなこと言われてたの? 職員室で挨拶したけど……。
「中には美帆子がやりやすそうだとか……誘おうとか言ってる人がいた」
うそ……そんなこと言ってる人がいたの……なんか職員室戻ったら男の先生たちが気持ち悪く感じそう。
「だから……昨晩のこと……一晩だけじゃないって……俺がどれだけ本気かって……」
……!
後ろから無理やりキスをされた。強く舌を捩じ込ませて……昨晩も凄かった。
酒に酔わなくてもここまで激しく。彼もだけど私も体が熱くなる。
「生徒たちも大人の女に飢えてるだろ……もしそんなことがあったら……」
生徒……もって。
そういえば前の方に座っていた生徒……私のことをずっと見ていた気もしたけど……。
それを思い出す前に和樹が私をソファーに押し倒した。かなり強引な彼を止めることはできない。
私も……。
だけど彼に対しては恋心は抱けなかった。
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