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湊音 第一話
「おい、座れー」
2年生の二学期。担任の大島は相変わらずうざい。声もやたらでかい。
お前の顔見たらすぐにみんな座るって。言わなくてもわかる。
だがなんか空気が違う感じがする。むさ苦しい男子がほぼ多数を占めているクラス。女子は固まって右側に固まっているからか、僕の周りが男しかいないからなのか。
でもそこに何か違う空気が流れてきた気がする。
それを感じ取ったのは僕だけだはなさそうだ。斜め後ろの親友倫典もソワソワしている。他の奴らも。
「今日からだってよ」
「なんだよ」
「教育実習生が来るの」
「教育実習……」
「大学生だって。しかも女子大生!」
やたらと情報通の倫典が親指で刺す方を見ると数人の女性たちが廊下をゾロゾロ歩いているのが見えた。
去年は男だった、うちのクラス。かなりひ弱だけど読書が好きで優しい人だった。だから話もあったけど精神的に弱かったのか最終日も迎えずに実習をやめてしまったっけ。
「よし、お前ら。今年も教育実習の時期が来て今年は今はここに合併されて無くなった女子校の生徒だった人たちも来てるから女性の先生が多いぞ」
なんか大島も嬉しそうで顔が緩んでる。結構遊んでるって噂だ。うざいけどまあまあ頼り甲斐はあるのだが……。
「よし、入ってこい」
と、ドアが静かに開く。そこに立っていたのは女性。グレーの上下のパンツスーツだ。
「失礼します」
少し緊張気味に大島の斜め前に来た。そう、ど近眼で一番前の僕の目の前に立った。
「慈愛西女子高校卒業、西成学院大学教育学科四年、菅原美帆子です。よろしくお願いします」
そうハッキリと堂々と話した彼女、菅原美帆子。これが彼女との初めての出会いだった。
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