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教室に慌てて戻るとそこには見覚えのない女性と倫典、数人の生徒たちが囲んでいた。
「あらー、どうしたの。すごい汗。息切らして……」
立ち上がるとその女性は美帆子先生とは対照的で清楚でなくセクシーで体のラインがピッタリとしたスーツを着ていた。
「おう、ごめん。三葉先生見たかってさ、体育館で。お前探したけどいなかったから……」
倫典はケロッとした顔で笑ってる。倫典は社交的で他のクラスメイトとも仲が良くムードメーカー。他に友達のいない僕はどう輪に入ればいいかわからないが大抵倫典が入れてくれる。
「へぇ、この子が槻山湊音くん……槻山……なんか聞いたこと……あれ」
三葉先生が驚いた顔をする。この顔は僕にはタイプではないが美しく整っていて綺麗である。
「おい、鼻血……湊音!」
「きゃー!」
女子生徒たちが騒ぎ出し、
「槻山が三葉先生みて鼻血出したぞ!!!」
と男子生徒が囃し立てる。
「大丈夫か? 一応俺は医者を家族に持つから対処法はわかってるぞ」
時たま自分が医者家系であることを強調するが親たちから勘当寸前の成績で見放されているというのは散々聞いてはいたがきっと好きな三葉先生の前でカッコつけたいんだろ。
だがなぜ鼻血が出たんだ、僕。三葉先生もセクシーだが……美帆子先生と大島のセックスする声を壁越しで聞いてわけがわからなくなって走り回って……ああ……そんなこと言えない。
「大丈夫? 湊音くん」
ああ、三葉先生のブラウスから谷間……ミニのスカート……ああ……なんだ、馬鹿か……僕は。
「おいどうした」
大島だ。さっきまで盛ってた野郎が。
「大島先生! 湊音くんが三葉先生見て鼻血出したんです!」
うるせぇ、違う! なんて女子生徒に叫ぶ気力無い。
大島が俺を見下ろす。
「大丈夫かぁ? 三葉せんせーすいませんね、若いやつだからちょいと血の気が多くて。ここは女子生徒少ないクラスだから……んねぇ」
セクハラにならないように言葉を選んでるのはわかるが、セクハラを超えてセックスをしていた野郎だからなぁ。チラッと大島は三葉さんの谷間を見ている。
「倫典どけ、そんなんじゃ余計に鼻血出るわい。ほれっ! 体起こせ、湊音」
「ぐへっ」
無理やり身体を起こされた僕はとんでも無い声が出た。と同時に鼻血が真っ白なシャツについた。先日サイズが上がったからと買い直してもらったのに。
「大丈夫?」
そこに薄ピンク色の布が差し出された。
「これ使って」
美帆子先生だ。いや、ダメだろ、こんな綺麗なハンカチに……。
「ああ借りるな」
と大島はグッとそのハンカチを僕の鼻に当てた。
がさつだ、本当に大島はガサツだ。だがハンカチからいい匂いがする。
「湊音! トイレットペーパーもってきたぞ!」
お役目ごめんになった倫典はダッシュでトイレットペーパー持ってきてくれたが遅い。お前のせいで美帆子先生の綺麗なハンカチに僕の血が染まった。
そして大島の荒治療のおかげで鼻血は早く止まった。
「あとは塵紙つめとけ、ハンカチも洗って返せよ」
美帆子先生はずっと僕の横で見てくれていた。恥ずかしい、醜態を……僕の醜態を。
顔を見るのが恥ずかしくて首元を見たら赤い点があった。そしてボタンが掛け違えていた。そしてほのかな石鹸の匂い。
あぁ、あのあとシャワーでも浴びたのか。あれは現実だったのか。
「はーい、美帆子先生の授業始めるから座れよ」
と大島の威勢のある声で野次馬も解散、気づけば他のクラスからも来ていた。
「私も明日授業あるからよろしくね」
と三葉先生にウインクされ同じく隣にいた倫典は少し嫉妬していた。
美帆子先生もハンカチは大丈夫、と言って持っていったが……大丈夫じゃ無いだろ。準備しに職員室に戻っていく姿を僕は自然と追っていた。
そして僕は三葉先生に欲情して鼻血を出したというレッテルをつけられた。
「お前、どっちが好きなんだよ」
と倫典に言われたがそんなことしらねぇ。
でも夜、美帆子先生と三葉先生にキスされて有頂天になってる夢を見て夢精した。
でもあの夢を見るよりかは良い。
母さんが僕の目の前で死ぬ夢よりも。
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