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「美帆子さん……なんてことを」
湊音くんは目を丸くしている。そりゃそうよね、私の突発的な考えに驚くしかないわよね。
独身寮は本当にワンルームで狭い。だが家族寮、いわゆる教職員用住宅は広い。ただそれだけでなくて家族手当もつく。
「……僕ら結婚だなんて」
「突然でびっくりするよね。だって湊音くん、大学に入る前だし」
「こんなの聞いたら母さん倒れる……いや怒ってキッチンドランカーにまた戻るな」
「そうよねぇ」
別にそんなの気にしない。広見さんにはまだ復讐が足りない。
でも唐突すぎるわよね。家賃は湊音くんに聞いてたよりも折半すれば安いけどー。
「でも悪くはない」
「えっ」
「だってもうあの家からは出たいし、美帆子とはずっとあるって決めているし」
「湊音くん……」
「借りようとしていた家よりも安くなるんでしょ。バイトも社会勉強としてやるつもりだったからその金で僕も出せるし」
顔真っ赤にしている湊音くん。
「でも条件はある」
「なに?」
「湊音くんが大学卒業するまでは子供は作らない」
「……まぁそうだよね」
「学校側もはっきり言わなかったけどできちゃった婚かと思われていい顔してなかったし」
それに私自身子供を育てるだなんて考えたことがない。
すると湊音くんは私の手をぎゅっと握った。
「でもさ、セックスはしていいんだよね?」
「……うん」
湊音くんは私をぎゅっと抱きしめてくれた。
「美帆子、もう寂しくないからね」
ああ、復讐を目的に近づいて……でもだんだん愛おしくなっていく湊音くん。
出会った頃はとても子供だなぁって思ったけど……大人になった。
何度も何度もキスをして。
私たちは何度も重なり合った。
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